無機顔料を含む漆塗装面からの重金属の溶出を防止するため, 無機顔料の耐酸性表面処理方法を検討した。用いた顔料は, 市販のカドモポン型硫化水銀カドミウム2種酸化鉄,
紺青
, 亜鉛華の5種類である。市販のシランカヅプリング剤7種を用いて上記各顔料を処理し, 105℃で2時間キュアさせた。顔料の色相, 粒度は未処理物と比べてほとんど劣らず, はっ水性を持つようになって親油性になり, 漆との結合もよくなる。希酸として5.9%塩酸, 5.5%酢酸で溶出試験した結果, 明らかに耐酸性を増していることを認めた。着色力も
紺青
のわずかな例を除き, ほとんど支障はない。塩基性基を含む処理剤による顔料は漆の乾燥を促進した。漆の塗装試験と, それに続く5.5%酢酸を用いる溶出試験を, 硫化水銀カドミウム顔料の一つを用いて60℃で30分間行なったが, 未処理, および処理済顔料共に, カドミウムおよび水銀を溶出しないことを認めた。
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