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161件中 1-20の結果を表示しています
  • 池野 祐太郎, 福田 航, 片岡 悠介, 近石 宣宏, 五味 徳之
    理学療法学Supplement
    2021年 48S1 巻 16
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/24
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  • *小林 大, 森田 哲生, 小川 維二
    中部日本整形外科災害外科学会学術集会 抄録集
    2008年 109 巻 1-F-3-4
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/08
    会議録・要旨集 フリー
  • 多田 健吾, 山田 英司, 近石 宜宏, 五味 徳之
    理学療法学Supplement
    2017年 2016 巻 P-MT-14-5
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/24
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    【はじめに,目的】

    変形性膝関節症患者(以下,膝OA)における歩行分析は臨床推論の過程において重要である。しかし,重症度をKellgren-Lawrence分類(以下,K/L分類)によって段階付けした研究は多く報告されているが,歩行分析の結果に基づき機能分類をした研究は散見される程度である。そこで,本研究の目的は膝OA患者の歩行時における膝関節可動範囲を用いて,膝OA患者をサブグループ化し,グループ間での因子を検討することとした。

    【方法】

    対象は当院に手術目的にて入院した膝OA患者46名(70.3±8.2歳,身長155.1±0.1cm,体重62.2±11.7kg)を対象とした。歩行中の膝関節屈曲角度は三次元動作解析装置(Vicon Motion System社,ViconMX)を用いて測定した。歩行条件は,裸足で自由歩行速度とし,マーカーは41か所に貼付した。なお,立脚時間を100%とした時間正規化を行い,計測した5歩行周期の中から,任意に3歩行周期を抽出し,膝関節屈曲角度の平均値を算出した。膝関節の可動範囲は,1.初期接地の膝関節角度と立脚期1~30%での最大屈曲時の差,2.立脚期1~30%での最大屈曲時と立脚期中の最大伸展時の差,3.立脚期中での最大伸展時と最大屈曲時の差の3か所の角度変化量を求めた。コントロール群として,健常高齢者50名を対象とし,同様に歩行分析を行い,3ヵ所の可動範囲を求めた。そして,膝OA患者において,3ヵ所ともコントロール群の可動範囲の平均±標準偏差から逸脱した群を範囲外群,それ以外を範囲内群に分類した。そして,2群間で術側下肢の他動的関節可動域,術側の等尺性筋力(膝関節屈曲・伸展筋群,股間節屈曲・伸展筋群),年齢,身長,体重,疼痛(NRS)を比較した。2群間の検定にはX2検定とMann-WhitneyのU検定を使用し,有意水準は5%とした。

    【結果】

    範囲外群は20名(gradeII4名,III1名,IV15名),範囲内群は26名(gradeII4名,III7名,IV14名)であり,両群間で各gradeの占める割合に差を認めなかった。範囲外群は全例コントロール群の可動範囲よりも低値を示し,有意差を認めた。2群間の比較では,範囲外群では,術側足関節背屈角度,体重が有意に低値を示し,年齢は有意に高く,運動時NRSは有意に大きかった。

    【結論】

    歩行時の膝関節可動範囲によって分類したサブグループは,K/L分類との関連を認めず,画像所見とは異なる特徴を反映したサブグループである可能性が示された。

  • 池野 祐太郎, 山田 英司, 福田 航, 片岡 悠介, 近石 宜宏, 五味 徳之
    理学療法学Supplement
    2017年 2016 巻 P-SP-04-2
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/24
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    【はじめに,目的】

    前十字靱帯(以下,ACL)損傷はジャンプ着地後から40ms以内に発生し,膝関節屈曲角度が小さく,膝外反・内旋運動によりACLのストレスが大きくなることが要因といわれている。また,ACL再建術後において,ジャンプ着地後に膝外反角度が大きく,膝伸展モーメントが小さい者は再損傷のリスクがあると報告されているが,膝関節運動と脛骨前方移動量(以下,ATT)の関係は不明である。そこで今回,ACL再建術後におけるジャンプ着地後の膝関節角度の変化とATTの関連を検討した。

    【方法】

    対象は半腱様筋腱と薄筋腱を用いた解剖学的二重束ACL再建術を施行された者(以下,ACL再建群)20例(年齢23.5±7.3歳,身長1.7±0.1m,体重66.6±12.2kg)と健常群10例(年齢24.5±3.2歳,身長1.7±0.1m,体重64.5±13.6kg)とした。対象者の選択基準は疼痛や関節可動域制限がなく,スポーツ復帰している者とした。また,測定時にLachman test,前方引き出しテストは全例が陰性であった。

    研究デザインは横断研究とした。測定課題は30cm台からのドロップジャンプ着地とし,ACL再建群は術側肢,健常群は利き足で測定した。測定機器は赤外線カメラ10台と床反力計4台(AMTI社,Watertown)で構成される三次元動作解析装置VICON-MX(Vicon Motion System社,Oxford)を用いた。なお,サンプリング周波数は120Hzとした。対象者はスパッツを着用し,直径9mmの赤外線反射マーカーを41ヵ所に貼付した。測定データは三次元動作解析ソフトウェアVisual3D ver.5(C-Motion社)を用いて膝関節屈伸・内外反・内外旋角度を求め,それぞれ初期接地と初期接地後40msでの膝関節角度の変化量を算出した。また,膝十字靱帯機能検査機器Knee Lax(インデックス社)を用いて全身麻酔下でのATTを求めた。

    統計手法に関して,ACL再建群と健常群における膝関節角度変化量の比較には2群の差の検定を用いた。また,膝関節角度変化量に差がみられた項目とATTとの関連には相関分析を用いた。なお,統計解析ソフトはR-2.8.1を使用し,有意水準は5%とした。

    【結果】

    ACL再建群の膝関節角度変化量は屈曲8.2±4.9°,内反0.5±1.4°,内旋0.8±0.9°,健常群の膝関節角度変化量は屈曲15.4±3.7°,内反0.9±1.4°,内旋0.9±1.0°であり,ACL再建群のATTは-0.4±3.2mmであった。ACL再建群は健常群に比べて,膝関節屈曲角度変化量が有意に小さかったが(p=0.001),その他の項目に差はなかった。また,膝関節屈曲角度変化量はATTとの間に負の相関があった(r=-0.46,p=0.04)。

    【結論】

    ACL再建群はジャンプ着地時に膝関節屈曲角度が小さく,膝関節での衝撃吸収が不十分であると考えられた。また,膝関節屈曲角度とATTとの間に負の相関を認めたことから,ACL以外の膝関節の安定に関与する因子が異なった膝関節屈曲角度においてATTと関連していることが示唆された。

  • 清水 亮介, 山田 英司, 近石 宣宏, 五味 徳之
    理学療法学Supplement
    2017年 2016 巻 P-MT-33-4
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/24
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    【はじめに,目的】

    膝関節内側コンパートメント障害の代表的疾患の一つに大腿骨顆部骨壊死(膝ON)がある。膝ONの原因は明らかではないが,歩行や日常生活動作の繰り返しによるメカニカルストレスが関与していると考えられ,歩行時の解析は発症要因を検討する有効な手段の一つと言える。正常歩行の立脚初期に起こる膝関節屈曲運動は,衝撃吸収や体重心の振幅減少に重要とされ,メカニカルストレスとの関連は大きい。歩行立脚初期に関する先行研究の多くは,変形性膝関節症(膝OA)を対象とした報告であり,膝ONを対象とした報告は少ない。そこで本研究は,三次元動作解析にて膝ON患者の歩行立脚初期の特性を明らかにし,健常者,膝OA患者との相違を検討した。

    【方法】

    対象は内側型膝ONと診断された15例15膝(年齢69.5±7.5歳,BMI24.9±3.1kg/m2,以下ON群)とKellgren-Lawrence分類gradeIVと診断された膝OA患者20例20膝(年齢68.9±6.1歳,BMI24.8±6.9kg/m2,以下OA群),健常高齢者7例14膝(年齢73.1±2.8歳,BMI23.8±2.0kg/m2,以下健常群)とした。測定機器は10台の赤外線カメラと床反力計(AMTI社製)4枚で構成された三次元動作解析装置VICON MX(vicon Motion System社製)を用いた。運動課題は通常歩行とし,快適歩行速度で歩行を行った。標点マーカーは,合計41点を貼付した。解析には歩行演算ソフトVISUAL3D(C-motion社製)を用いて,計測データから立脚期を100%に正規化し,立脚初期の膝関節屈伸運動にあたる1%,10%,20%,30%の矢状面における股関節,膝関節,足関節角度を算出し,3歩行周期の平均値を3群間で比較した。なお,統計処理には,R-2.8.1を使用し,多重比較検定を行った。有意水準は5%とした。

    【結果】

    1)股関節屈曲角度についてON群は,1%,10%ではOA群と比較して有意に伸展位であったが,健常群とは有意差を認めなかった。20%,30%においては,ON群はOA群,健常群の両群ともに有意差を認めなかった。

    2)膝関節屈曲角度についてON群は,OA群と比較して1%から30%の全てで有意差を認めなかったが,健常群と比較すると,OA群と同様に20%,30%では有意に伸展位であったが,1%,10%では有意差を認めなかった。

    3)足関節背屈角度についてON群は,OA群と比較して1%から30%の全てで有意差を認めなかった。健常群との比較においては,1%,30%で有意に底屈位であったが,10%,20%では有意差を認めなかった。

    【結論】

    ON群でOA群と差を認めたのは股関節屈曲角度のみであり,立脚初期の歩行特性はOA群と類似していた。しかし,ON群,OA群ともに健常群との比較において,膝関節屈曲角度は少なかったが,股関節と足関節の変化は異なる傾向を示した。このことから,ON群とOA群ともに,立脚初期の膝関節屈曲運動が減少しているが,他関節との関連性は異なっている可能性が考えられた。

  • 片岡 悠介, 山田 英司, 福田 航, 池野 祐太郎, 二宮 太志, 五味 徳之
    理学療法学Supplement
    2016年 2015 巻 O-SP-01-4
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/28
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    【はじめに,目的】スタートダッシュとは,静止の状態から素早く動き出すことが必要とされる動作であり,様々なスポーツ競技において必要不可欠である。また,始動後に速く走る重要なポイントは,重心の素早い水平方向への加速であるとの報告もある。本研究の目的は,前十字靭帯(以下,ACL)再建術後患者と健常者におけるスタンディングスタート(以下,SS)の運動学,運動力学的特徴を比較することである。【方法】対象は,膝屈筋腱を用いたACL再建術後患者10名の術側(以下,ACL群,男性5名,女性5名,年齢21.8±6.1歳,身長166.0±8.0cm,体重63.4±5.8kg,再建術から測定までの期間15.8±5.7ヵ月)と下肢に既往のない健常者10名の利き足側(以下,健常群,男性5名,女性5名,年齢23.2±2.0歳,身長164.0±8.1cm,体重57.0±10.3kg)とした。動作課題はSSとし,健側を前にした静止立位から用意の体勢となり,LED発光を号砲とし,素早く前方に始動する動作とした。動作条件は規定せず,LED発光後素早く前方に始動することのみ指示した。動作解析は,被験者に反射マーカーを41点貼付し,三次元動作解析装置VICON MX(VICON Motion Systems社)と床反力計(AMTI社)を用いて行った。解析ソフトVISUAL3D(C-Motion社)を用いて,SS姿勢の後脚を解析した。そして,床反力前方成分の最大値,この時点の床反力鉛直成分,重心の前後加速度,矢状面上における下肢関節角度,下肢関節モーメント,骨盤前後傾角度,体幹前後屈角度をそれぞれ算出した。なお,床反力・下肢関節モーメントは正規化するため体重で除した値を用いた。統計処理は,統計処理ソフトR-2.8.1を用いて,各項目のACL群と健常群の差を比較するためt検定を行った。有意水準は5%とした。【結果】床反力前方成分の最大値はACL群6.4N/kg,健常群8.3N/kgであり,ACL群が有意に小さかった(p=0.048)。また,この時点の床反力鉛直成分に有意差は認めなかった。重心の前方加速度はACL群6.6±2.0m/s2,健常群8.9±2.3m/s2,膝関節屈曲角度はACL群27.0±15.6度,健常群42.1±11.6度,膝関節伸展モーメントはACL群0.42±0.67 Nm/kg,健常群1.14±0.56 Nm/kgであり,それぞれACL群が有意に小さかった(p=0.031,p=0.018,p=0.018)。骨盤前傾角度はACL群26.6±8.5度,健常群18.1±7.1度,体幹前傾角度はACL群32.3±9.8度,健常群20.1±9.7度であり,それぞれACL群が有意に大きかった(p=0.028,p=0.012)。矢状面上におけるその他の項目に有意差を認めなかった。【結論】ACL群は床反力前方成分・膝関節伸展モーメントが低下していた。これは,ACL群の膝関節屈曲角度が小さく,骨盤前傾・体幹前屈角度が大きいという特徴的な姿勢により,膝関節伸展筋を十分に使用しない蹴り出し方を行っていると考える。その結果,重心の加速度を十分に増加できていないと考えた。これらは,術後理学療法の重要な視点を提示していることが示唆された。
  • 村本 浩章, 山田 英司, 二宮 太志, 五味 徳之
    理学療法学Supplement
    2016年 2015 巻 P-MT-42-5
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/28
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに,目的】変形性膝関節症(以下膝OA)患者の特徴として,重心の後方化が報告されている。また,膝OAの代償的歩行戦略として歩幅の減少が報告されている。しかし,矢状面上の重心位置と歩幅の関係や術後の関節角度の変化は明らかではない。そこで,本研究では開大式高位脛骨骨切り術(以下OHTO)前後の踵接地時における重心の前後位置および下肢関節角度の変化を検討することを目的とした。【方法】対象は膝OAと診断され,OHTOを施行された男性5名,女性21名(平均年齢65.9±7.4歳)の26肢(OHTO群)とした。Kellgren-Lawrence分類の内訳はGradeIII14肢,GradeIV12肢であった。運動学データは10台のカメラから構成された三次元動作解析装置VICON MX(Vicon Motion System社製)と4枚の床反力計(AMTI社製)を用いて測定した。被験者にはマーカを身体の41ヵ所に貼付し,測定動作は裸足による自由速度での歩行とした。解析ソフトVISUAL3D(C-Motion社製)を用い,ステップ長,術側踵接地時の重心位置の割合(前足踵から重心までの距離/ステップ長×100の百分率で計算),歩行速度,前方肢の矢状面の股関節・膝関節・足関節角度を算出した。各値は3歩行周期の平均値とし,術前および術後6ヶ月時点で測定した。また,健常群として健常者100肢(平均年齢60.6±7.3歳)の踵接地時における運動学データも同様に算出し,膝OA患者と比較・検討した。統計学的検定にはTukey法を用い,有意水準は5%とした。【結果】ステップ長は術前OHTO群0.30±0.05m,術後OHTO群0.33±0.04m,健常群0.39±0.04mであり,術後OHTO群で有意に増大したが,健常群は他の2群より大きかった。重心位置の割合は術前OHTO群32.3±5.3%,術後OHTO群34.3±3.9%,健常群32.2±4.9%であり,術前後に差を認めず,術後OHTO群では健常群より有意に重心の後方化を認めた。歩行速度は術前OHTO群0.90±0.20m/s,術後OHTO群0.98±0.20m/s,健常群1.38±0.16m/sであり,術後OHTO群で有意に増大したが,健常群は他の2群より速かった。股関節屈曲角度では術前OHTO群34.0±9.7°,術後OHTO群37.9±7.6°,健常群31.7±6.0°であり,術前後で差を認めず,術後OHTO群は健常群よりも有意に屈曲位であった。膝関節屈曲角度は術前OHTO群8.8±5.5°,術後OHTO3群10.1±5.7°,健常群4.6±4.5°であり,術前後で差を認めず,健常群は他の2群より有意に伸展位であった。足関節では術前OHTO群9.2±4.9°,術後OHTO群7.0±4.5°,健常群7.0±4.0°であり,術前OHTO群は他の2群よりも有意に背屈位であった。【結論】先行研究と同様に,術前は膝関節の伸展制限によるステップ長の減少と歩行速度の低下が生じているが,健常群と比較して重心の後方化は認められなかった。術後は踵接地時の重心位置の後方化が認められたが,術後に股関節の屈曲角度とステップ長が増加したことが原因であると考え,今後はこれらの変化の長期的な検討が必要である。
  • 池野 祐太郎, 福田 航, 片岡 悠介, 濱野 由夏, 竹内 謙太, 川上 翔平, 森田 哲生
    理学療法科学
    2014年 29 巻 3 号 459-462
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕膝前十字靱帯(ACL)再建における手術前スクワット時ハムストリングス筋活動量と手術6ヵ月後大腿四頭筋筋力の関連性を検討することとした.〔対象〕解剖学的2重束ACL再建術を施行された患者12名とした.〔方法〕手術前スクワットのハムストリングス筋活動量と手術6ヵ月後大腿四頭筋筋力体重比を測定し,これらの間の相関を求めた.〔結果〕手術前スクワット時ハムストリングス筋活動量と手術6ヵ月後大腿四頭筋筋力体重比に負の相関が認められた.〔結語〕ACL再建術を施行された患者において,スクワット時のハムストリングス筋活動が高い者は,ACL再建術後急性期にリスク管理上良好なCKCによる動作が行われているにもかかわらず,その後の大腿四頭筋筋力が低いことを示唆している.
  • 福田 航, 横山 茂樹, 山田 英司, 片岡 悠介, 濱野 由夏, 池野 祐太郎, 近石 宣宏, 五味 徳之
    理学療法学Supplement
    2017年 2016 巻 O-SP-01-2
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/24
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに,目的】前十字靭帯(ACL)再建術後の治療成績の判定には片脚ジャンプ距離がよく用いられ,健患比の向上が目標となる。跳躍力の改善には,踏込時の膝関節屈曲角度の増加を図るなど,主に矢状面上での下肢関節運動の改善が重要とされるが,股関節内外転などの前額面上の運動とジャンプ距離の関係は明らかではない。ジャンプ踏込時における股関節内外転運動の制御不全は骨盤や体幹の不安定性を助長し,ジャンプ距離の減少に関与すると推測する。そこで本研究では,ACL再建術後の片脚ジャンプ距離の向上に向けて股関節内外転角度に着目し,踏込時における股関節内外転角度とジャンプ距離の関係を明らかにし,ジャンプ踏込時の股関節内外転角度と股関節内外転筋力の関係を検討することを目的とした。

    【方法】対象は半腱様筋腱と薄筋腱を用いたACL再建術後1年時の患者19名(平均年齢23.3±7.3歳,男性12名,女性7名)である。測定課題は最大努力での前方片脚ジャンプとした。測定機器は赤外線カメラ10台を用いた三次元動作解析装置VICON MX(VICON Motion Systems,Oxford)と床反力計(AMTI社)4枚を用いた。反射マーカーは直径9mmを使用し41点貼付した。得られた運動学データから演算ソフトVisual3D(C-Motion社)を用いて片脚ジャンプ距離と踏込時の股関節内外転角度を算出した。また,踏込時の股関節内外転角度に関与する因子として,最大股関節内外転筋力,内外転筋力比を測定した。筋力は等尺性筋力測定器ミュータス(アニマ株式会社)を用いて股関節内外転0度の肢位で測定し,体重とアーム長(膝関節裂隙~センサー中央)で補正した値を求めた。分析は,片脚ジャンプ踏込時における股関節内外転角度とジャンプ距離の関係を相関分析で検討し,ジャンプ踏込時における股関節内外転角度と股関節外転筋力,内転筋力,内外転筋力比の関係を相関分析で検討した。統計処理ソフトにはR2.8.1を用い,有意水準は5%とした。

    【結果】片脚ジャンプ距離は1.2±0.3mであり,踏込時の股関節角度は内転12.4±4.6度であった。筋力は股関節外転0.85±0.39Nm/kg,股関節内転0.72±0.25Nm/kg,内外転筋力比120.7±33.8%であった。踏込時の股関節内転角度とジャンプ距離には負の相関(r=-0.46),踏込時の股関節内転角度と股関節外転筋力に負の相関(r=-0.49)を認めた。その他には相関を認めなかった。

    【結論】ACL再建術後における片脚ジャンプ距離の増加には,踏込時の股関節内転運動の関与が明らかとなり,股関節内転の減少を図る必要が示唆された。また,踏込時の股関節内転運動には股関節外転筋力が単独で関与しており,再建術後の理学療法における介入ポイントになると考える。本研究結果から,ジャンプ距離を増加させるうえで踏込時の股関節内転運動に注目する必要があることが判明し,ACL再建術後のジャンプ動作の評価および介入において意義がある。

  • 青芝 貴夫, 山田 英司, 五味 徳之
    理学療法学Supplement
    2016年 2015 巻 P-MT-42-4
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/28
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに,目的】開大式高位脛骨骨切り術(以下,OHTO)は,変形性膝関節症(以下,OA)や大腿骨顆部骨壊死(以下,ON)の手術的治療として確立されているが,術後の問題点として下肢長不等や脛骨後傾による膝関節伸展不全などが挙げられ,これらが日常生活動作,特に立ち上がり動作の非対称性に影響していると考えられる。そこで今回,OHTO抜釘時における立ち上がり動作の床反力の左右差に影響を及ぼす因子について検討した。【方法】対象は当院でOHTO施行後に抜釘術を施行された40例40膝(男性14例,女性26例,年齢66.7±8.3歳,全例片側抜釘,OA35例,ON5例,抜釘時までの期間14.1±2.7か月)とし,30秒椅子立ち上がりテストに準じた立ち上がり動作を5回実施し,三次元動作解析装置(Vicon Motion System社)と床反力計(AMTI社)を用いて測定した。そして,左右の床反力鉛直成分のピーク値の平均値を算出し,反対側と抜釘側の差を求めた。測定項目は両側の膝関節屈曲および伸展可動域,股関節伸展可動域,等尺性膝関節屈曲および伸展トルク値,等尺性股関節伸展トルク値,脚長差(SMD,TMD,下腿長),大腿周径差(膝蓋骨上縁から5cmおよび10cm),疼痛の程度(NRS)とし,脚長差と大腿周径差は反対側と抜釘側の値の差を求めた。統計処理は,統計ソフトR2.8.1を用いて床反力鉛直成分のピーク値の平均については,反対側と抜釘側の間で対応のあるt検定を行い,反対側と抜釘側の床反力ピーク値の差と各測定項目との間で相関関係について検討した。尚,有意水準は5%とした。【結果】床反力鉛直成分のピーク値の平均値は,反対側が406.0±77.4N,と抜釘側が370.2±78.4Nであり,両群間で有意差を認めた(p<0.01)。しかし,反対側と抜釘側の床反力ピーク値の差と各測定項目との間ではいずれも相関関係を認めなかった。【結論】OHTO術後の問題点である下肢長不等や脛骨後傾による膝関節伸展不全などが立ち上がり動作の非対称性に影響していると仮説を立てて,本研究を行った。OHTO抜釘時の立ち上がり動作における床反力鉛直成分のピーク値は,反対側が抜釘側と比較して有意に大きかった。しかし,反対側と抜釘側の床反力ピーク値の差に,股関節や膝関節の可動域や筋力などの身体機能や脚長差と大腿周径差および,疼痛の程度と相関関係を認めなかったことから,これらの因子は影響していないことが示唆された。立ち上がり動作は,臀部・大腿部と足部で作られる広い支持基底面の座位姿勢から,足部のみの狭い支持基底面で立位姿勢を保持しつつ行われる過渡動作であり,重心移動などの因子も床反力の差に影響を及ぼすと考えられるため,重心移動の軌跡などの検討が必要と考える。本研究の結果よりOHTO術後の立ち上がり動作の特徴が明らかになったが,身体機能などは影響しないことが示唆された。今後研究を継続し,長期的な視点でADL機能改善を考慮した理学療法の一助としたい。
  • 池野 祐太郎, 福田 航, 濱野 由夏, 片岡 悠介, 竹内 謙太, 川上 翔平, 五味 徳之
    理学療法学Supplement
    2013年 2012 巻 C-O-10
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/20
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 膝前十字靭帯(以下,ACL)再建術後はリスク管理の面から脛骨前方移動量(以下,ATT)の少ない運動が選択されるが,術後6ヶ月頃から競技復帰されるため医学的管理の場面が減少する.したがって,術後6ヶ月時点の身体状態と以降の運動量の程度から術後約1年時のATTに関連する因子を検討することは理学療法の目標を設定するうえで重要である. そこで,本研究はACL再建術後1年時のATTと術後6ヶ月時点の身体状態と以降の運動量の程度の関係を検討することを目的とした.【方法】 当院関節外科で解剖学的2重束ACL再建術(STG腱)を施行し,理学療法を施行した31例31肢を対象とした.男性19例,女性12例,平均年齢30.4±10.7歳,身長159.8±29.2cm,体重67.6±16.4kgであった.合併症は,内側半月板損傷11例,外側半月板損傷4例,内側側副靭帯損傷2例であった. 研究デザインは後向きコホート研究である. ATTは術後1年時の抜釘の際に医師がKneeLaxを用いて計測した. ATTに関連する因子として,膝屈曲筋力体重比(以下,膝屈曲筋力),膝伸展筋力体重比(以下,膝伸展筋力),膝屈曲筋力を膝伸展筋力で除した値(以下,H/Q比),膝関節伸展可動域(以下,伸展可動域),運動量,体重変化の測定,調査を行った.筋力は,CYBEXNORMを用いて術後6ヶ月時に測定した.膝屈曲筋力,膝伸展筋力のピークトルク値を測定し,体重で除した値を体重比として求めた.また,H/Q比は,膝屈曲筋力を膝伸展筋力で除して求めた.関節可動域は,日整会の方法に準じて,伸展可動域を測定した.運動量は,術後6ヶ月~9ヶ月以降の競技復帰度を週1~2回,週3~4回,5回以上に区分した.体重の変化は,術前と術後6ヶ月を測定し,術後6ヶ月を術前の差を求めた. 統計学的処理は,ATTを目的変数とした重回帰分析による多変量解析を行った.膝屈曲筋力,膝伸展筋力,H/Q比,伸展可動域,活動量,体重変化の6項目を説明変数とした.さらに,説明変数の多重共線性を考慮し,膝屈曲筋力,膝伸展筋力,H/Q比の3つの説明変数を同じモデルに含めず,目的変数に対して3つのモデルを立て解析を行った.統計解析には統計ソフトSPSS(StudentVersion16.0)を用い,有意水準は5%とした.【倫理的配慮】 本研究の実施に際して,「ヘルシンキ宣言」と「臨床研究に関する倫理指針」に従った.対象者および親権者には書面および口頭にて本研究の目的と内容に関する説明を行い,書面による同意を得た.また,データ収集,分析,公表では個人情報が特定出来ないようにコード化した.【結果】 ATT0.6±3.4mm,膝屈曲筋力0.9±0.4Nm/kg,膝伸展筋力1.7±0.7Nm/kg,H/Q比0.5±0.2,体重変化1.3±1.8kgであった.ATTの関連因子は,膝屈曲筋力(p=0.036,偏回帰係数3.437),膝伸展筋力(p=0.031,偏回帰係数1.961),体重変化(p=0.033,偏回帰係数0.743)であった.ATTが少ない場合,膝屈曲筋力,膝伸展筋力が高値であること,体重変化が低値であることが関係していた.【考察】 ACL再建術後はOpen Kinetic Chainでの膝伸展筋力強化が制限されることから膝伸展筋力に比べて,膝屈曲筋力が相対的に大きく改善されやすい.つまり,再建術後6ヶ月時のH/Q比は,多くの症例で高値を示しやすいと推測される.そのため,本研究ではATTとH/Q比に関連を示さなかったものと考えた.一方で,膝伸展筋力の強化はATTの増加に関連すると推測されるが,本研究では術後6ヶ月時の膝伸展筋力が大きいほど術後1年時のATTが小さくなるという結果となった.このことから,競技復帰するうえでは,膝屈曲筋力に加えて膝伸展筋力の改善が膝関節の機能的安定性をもたらし,その間接的な効果としてATTの増大の予防に寄与していると考えた.
  • 山田 英司, 福田 航, 片岡 悠介, 池野 祐太郎, 川上 翔平, 青芝 貴夫, 村本 浩章, 清水 亮介, 須崎 裕司, 酒井 淳子, 岡 裕之, 多田 健吾
    理学療法科学
    2019年 34 巻 1 号 27-30
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/02/26
    ジャーナル フリー

    〔目的〕本研究の目的は内側楔状開大式高位脛骨骨切り術(OWHTO)術後のFTAと歩行中の膝関節内反角度との関係と,膝関節のアライメントの変化が,歩行中の股関節と足関節の前額面の角度に及ぼす影響を明らかにすることである.〔対象と方法〕当院にて,OWHTOが施行された49名を対象とした.術前と術後1年時に歩行分析を行い,FTAと立脚期50%時点の膝関節内反角度との関係を検討した.また,股関節,膝関節,足関節の立脚期50%の時点の値を術前後で比較した.〔結果〕FTAと立脚期50%時点の膝関節内反角度との間には中等度の正の相関関係を示した.〔結語〕術後はFTAと歩行中の膝関節内反角度は完全に一致しないことを留意する必要があると考えられた.

  • 疼痛の有無による骨盤運動の違いに着目して
    菰渕 真紀, 山田 英司, 福田 航, 五味 徳之
    理学療法学Supplement
    2011年 2010 巻 OI2-034
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    競技スポーツの低年齢化により成長期におけるスポーツ障害が注目されている。中でもOsgood-Schlatter病は,成長期の代表的な骨端症であり,成長期の男子に多く発症すると報告されている。本研究では,大腿および膝前面痛を有する成長期サッカー選手におけるしゃがみ込み動作時の骨盤の運動が生じるタイミングを明らかにすることを目的とし,大腿から膝関節前面に疼痛を認める群(以下 疼痛群)と認めない群(以下 非疼痛群)において、ビデオカメラを用いた二次元動作解析を用いて,立位時およびしゃがみ込み時の矢状面における各関節角度を測定した。
    【方法】
    中学1年生から中学3年生までのジュニアサッカーチームに所属する男子34名(平均年齢13.4±1.0歳,身長161.5±7.2cm,体重48.5±7.3kg)を対象とした。また,過去1年間に大腿から膝関節前面にかけて疼痛の既往が有る者を疼痛群17名(平均年齢13.3±1.0歳,身長160.4±8.5cm,体重47.6±7.6kg),同部位に疼痛の既往が無い者を非疼痛群17名(平均年齢13.5±1.0歳,身長162.6±5.8cm,体重49.3±7.1kg)に分類した。各被験者の第7頚椎(以下 C7)・第7胸椎(以下 Th7)・第12胸椎(以下 Th12)・第2仙椎(以下 S2)・腸骨稜・上前腸骨棘・大転子・膝外側関節裂隙(以下 膝裂隙)・腓骨外果・第5中足骨頭の体表面に15mmのマーカーを貼付し,自然立位からのしゃがみ込みを課題とし,連続3回実施した。なお,踵は離地せず,両上肢は前胸部で組むよう指示した。左側方よりデジタルビデオカメラで撮影し,画像解析ソフトImage‐Jを用いて上部胸椎角度・下部胸椎角度・腰椎角度・股関節角度・膝関節角度・足関節角度・骨盤傾斜角度・大腿後傾角度・下腿前傾角度を計測した。関節角度の定義は,上部胸椎角度はC7‐Th7‐Th12でなす角度,下部胸椎角度はTh7‐Th12‐腸骨稜でなす角度,腰椎角度はTh12‐腸骨稜‐S2でなす角度,股関節角度は腸骨稜‐大転子‐膝裂隙でなす角度,膝関節角度は大転子‐膝裂隙‐腓骨外果でなす角度,足関節角度は膝裂隙‐腓骨外果‐第5中足骨頭でなす角度,骨盤傾斜角度は後上腸骨棘‐上前腸骨棘‐床面との水平線でなす角度,大腿後傾角度は大転子‐膝裂隙‐床面との垂線でなす角度,下腿前傾角度は膝裂隙‐腓骨外果‐床面との垂線でなす角度とした。立位での各関節角度と,立位から左大腿部が床面と平行位になる範囲を,膝関節屈曲0°,30°,60°,90°の4期に分け,各期での関節角度および各相での関節角度の変化量について比較・検討した。なお,膝関節90°屈曲困難な被検者は最大膝屈曲位での角度を測定した。また,疼痛の有無に関して問診・アンケートにより調査した。統計学的検定には,疼痛群と非疼痛群の各期における関節角度,各相における関節角度の変化量の差の比較には対応の無いt検定を用いた。尚,有意水準はそれぞれ5%とし,統計解析にはSPSS Ver.16.0を用いた。
    【説明と同意】
    本研究の目的を全被験者,保護者,監督,トレーナーに対し,十分に説明し同意を得た上で行なった。また,本研究は
    総合病院回生病院
    倫理委員会の承認を得て実施した。
    【結果】
    関節角度の比較では,膝関節屈曲30°における骨盤傾斜角度は疼痛群が有意に後傾位であった(p<0.05)。関節角度の変化量の比較では,膝関節屈曲0°から30°にて腰椎角度は疼痛群で有意に屈曲角度が増加していた(p<0.05)。また,骨盤傾斜角度は疼痛群で有意に前傾が少なかった(p<0.05)。膝関節屈曲30°から60°にて骨盤傾斜角度は疼痛群で有意に前傾が増加していた(p<0.05)。
    【考察】
    本研究では,疼痛群においてしゃがみ込み初期に骨盤前傾運動はほとんど生じず腰椎屈曲運動が著明であり,骨盤前傾運動よりも腰椎屈曲運動が先行して生じているという身体的特徴が明らかとなった。疼痛群では,しゃがみ込み初期に大腿直筋を過剰に働かせハムストリングスの収縮が不十分であり,腰椎屈曲運動にて体幹の前屈運動を代償していることが予測される。今回の結果より,大腿および膝前面痛を有する者に対し,しゃがみ込み初期の骨盤運動への着目が重要であることが示唆された。
    【理学療法学研究としての意義】
    成長期サッカー選手のしゃがみ込み動作における,骨盤の運動が生じるタイミングを把握し,治療・介入時に応用すること。
  • 大西 由夏, 福田 航, 五味 徳之
    理学療法学Supplement
    2010年 2009 巻 P1-159
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/25
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】膝関節痛を主症状とする代表的な疾患として変形性膝関節症(以下膝OA)が挙げられ、厚生労働省の調査では、膝OAの潜在的な患者数は約3,000万人と推定されている。膝OA患者の多くは膝のこわばり感が出現し、次第に正座や階段昇降、歩行で疼痛が出現する。さらに膝OAの進行に伴い関節可動域制限が出現し、身体活動量の減少からQuality of Life(以下QOL)が阻害されるため、症状の改善を期待し手術を希望する患者もみられる。したがって我々は、術後の理学療法に反映するために、患者の術前のQOLを把握し評価する必要性があると考えられるが、手術適応となる患者のQOLが実際どの程度低下しているのか、並びにQOLの低下に関連する身体機能についての報告はあまり見あたらない。そこで本研究は、膝OAに対する疾患特異的QOL評価尺度として、日本版膝関節症機能評価尺度(以下JKOM)を用い、患者の術前QOLを評価し、QOLの低下に関連する各要因ならびに身体機能との関連性について検討した。

    【方法】対象は、膝OAにて高位脛骨骨切り術、単顆片側置換術、人工膝関節置換術の目的で当院に入院した33例33膝であった。性別は男性7例、女性26例で、術側は右13膝、左20膝、平均年齢は72.3±7.9歳(54~84歳)であった。対象者には入院時に自己記入式にてJKOMを調査した。身体機能評価は身長、体重、BMI、変形性膝関節症膝治療成績判定基準(以下JOAスコア)、Visual Analogue Scale(以下VAS)、膝可動域、等尺性膝伸展・屈曲筋力、10m歩行速度(快適・最大)を行った。また、医師の指示のもとに当院放射線技師が撮影した膝レントゲン画像からFemoral Tibial Angle(以下FTA)ならびに北大式病期分類(以下stage)を判定した。統計学的処理は、JKOMの総合点数ならびに下位評価尺度に対する各要因・身体機能との関連性についてSpeamanの順位相関係数を算出した。有意水準は5%とした。

    【説明と同意】術前評価項目であるJOAスコア、VAS、可動域、筋力、歩行速度は術後の理学療法を施行するうえで有益な情報となることを対象者に説明した。そのうえで、得られたデータを本研究で使用することについて十分な説明を行い、研究参加に対する同意を書面にて得た。

    【結果】対象者の膝OA病期分布は、stage1:0名、stage2:3名、stage3:7名、stage4:19名、stage5:4名であり、対象の約6割がstage4に集中していた。JKOM総合点数の平均値は76.3±21.9点であった。JKOM総合点数と有意な相関関係が認められた評価項目は、JOAスコア(r=-0.66)、VAS(r=0.70)、膝屈曲可動域(r=0.42)、10m歩行速度快適(r=0.48)、10m歩行速度最大(r=0.56)であった。JKOM下位評価尺度と有意な相関関係が認められた評価項目は、「膝の痛みやこわばり」で、stage(r=0.43)、JOAスコア(r=-0.66)、VAS(r=-0.71)、膝屈曲可動域(r=-0.59)であった。「日常生活の状態」では、JOAスコア(r=-0.61)、VAS(r=-0.64)、膝屈曲可動域(r=-0.40)、10m歩行速度快適(r=0.41)、10m歩行速度最大(r=-0.50)であった。「ふだんの活動など」では、JOAスコア(r=-0.59)、VAS(r=0.60)、10m歩行速度快適(r=0.56)、10m歩行速度最大(r=0.64)であった。「健康状態について」では有意な相関関係は認められなかった。

    【考察】本研究対象者におけるJKOM総合点数は平均77点であった。先行研究ではOAを有する地域在住高齢者においてJKOM総合点数が平均53点であったと報告されており、本研究が異なる結果を示したのは、OA重症度の違いに加え、手術適応であることが関連していると考えた。また、JKOM総合点数とJOAスコア、VAS、膝屈曲可動域、10m歩行速度(快適・最大)に有意な相関関係が認められ、これらはQOLに影響すると考えた。さらに、ADL能力と高い関連性を持つとされる10m歩行速度において有意な相関関係がみられたことで、術後のQOLの改善にADL能力の改善が必要であると示唆された。一方、JKOM下位評価尺度と各評価項目との関連性においてはJOAスコア、VAS、10m歩行速度(快適・最大)で、「健康状態について」以外の下位尺度に対し有意な相関関係が認められた。特にVASではそれぞれ0.6以上の高い相関関係を示しており、膝の痛みはADL能力に対する影響が強いと考えられた。

    【理学療法学研究としての意義】手術適応となる膝OA患者において、術前QOLには痛みの関連が強いことが示唆された。この知見は術後の理学療法において、痛みへのアプローチの重要性を再認識するうえで意義があると考えた。
  • 池野 祐太郎, 田中 聡, 山田 英司, 福田 航, 片岡 悠介, 二宮 太志, 五味 徳之
    理学療法学Supplement
    2014年 2013 巻 1418
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに,目的】膝前十字靱帯(ACL)損傷後は,外部膝関節屈曲モーメントを低下させた歩行(Quadriceps Avoidance Gait:QAG)が多くみられる。QAGは,ACLに緊張のかかる脛骨前方移動(Anterior tibial translation:ATT)を促す大腿四頭筋収縮を避けるために起こる現象といわれている。一般的に再建靱帯の成熟には時間を要することから,QAGは,再建靱帯の保護というリスク管理の点からも有利に作用すると考えられる。ACL再建術後の報告では,膝蓋腱を用いたACL再建術前後の歩行分析において,術後もQAGが残存していたと報告されている。一方,近年多く行われている半腱様筋腱・薄筋腱(膝屈筋腱)を用いたACL再建術後におけるQAGに関する検討はない。そこで今回,膝屈筋腱を用いたACL再建術後患者において,3次元動作解析装置を用いてACL再建術前後でのQAGの検証を目的とする。【方法】対象は,当院で同一術者により膝屈筋腱を用いた多重折二重束解剖学的ACL再建術を施行された12例24肢とした。対象者は男9例,女3例,年齢24.9±6.9歳,身長170.0±9.6cm,体重67.5±13.1kg,BMI23.2±2.6kg/m2,合併症は半月板損傷4例,内側側副靱帯損傷2例であった。受傷から手術までの待機期間は23.5±22.9週であった。方法は,3次元動作解析装置TOMOCO-VM(東総システム)と床反力計(AMTI社製AccuGait)を用いた。測定課題は通常歩行とし,健側患側における歩行時立脚初期の外部膝関節屈曲伸展モーメントをそれぞれ求め,体重で除した値を算出した。測定時期は手術前と膝関節屈曲拘縮が改善された手術後9週時とした。なお,3次元動作解析装置TOMOCO-VMの信頼性については,事前に健常者5名を対象に歩行中における膝関節角度データから検討し,その結果ICCは(1,1)0.78,(2,1)0.80と信頼性の高いデータを得ている。統計学的処理は,正規性の検定により,すべての項目で正規性であることが確認されたため,健側患側の比較は2標本t検定,ACL再建術前後の比較は対応のあるt検定を用いた。統計ソフトはR-2.8.1を使用し,有意水準は5%とした。【倫理的配慮,説明と同意】倫理的配慮に関して,ヘルシンキ宣言と臨床研究に関する倫理指針に基づき,対象者および親権者に本研究の実施計画を文書及び口頭にて十分に説明し書面による同意を得て実施した。なお,本研究実施に際して,当院に帰属する倫理審査委員会の承認を得た(承認番号:2011-4)。【結果】手術前と9週時の健側と患側の比較では,患側で外部膝関節屈曲モーメントが有意に低下していた。また,手術前後における外部膝関節屈曲モーメントの比較では,有意差は認められなかった。【考察】膝屈筋腱を用いたACL再建術後患者は,膝屈筋腱を採取していることから,外部膝関節屈曲モーメントの増加が推測される。膝屈筋腱を用いたACL再建術後患者に3次元動作解析装置を用いて検討した結果,術前にみられたQAGは術後9週でも残存していた。外部膝関節屈曲モーメントの低下は再建靱帯の保護としてリスク管理になると考えられる。術後のQAG現象の残存はリスク管理として重要であるが,QAGが長期間残存することで大腿四頭筋筋力低下や膝蓋大腿関節障害が生じることも考えられる。今後は経時的変化を追うことや筋力との関連を検討する必要があると考えられた。本研究の限界として,外部膝関節屈曲モーメントでは大腿四頭筋やハムストリングスの活動を相対的に観察し,ATTを推測しているが,それぞれの筋活動がATTに及ぼす影響は確認できていない。今後の課題として,ACL再建術後患者において,3次元動作解析装置と床反力計,筋電図を用いて,外部膝関節屈曲モーメントと膝周囲筋活動量の関連を検討することが必要と考えられた。【理学療法学研究としての意義】膝屈筋腱を用いたACL再建術後における歩行時立脚期の外部膝関節屈曲モーメントを検討することはリスク管理の点からも重要であると考えられる。本研究結果より,膝屈筋腱を用いたACL再建術後は外部膝関節屈曲モーメントの低下がみられることから,歩行時に再建靱帯の保護をしていると考えられた。
  • 浜田 佳孝, 日比野 直仁, 八木 啓輔, 安井 夏生, 高井 宏明, 千見寺 貴子
    中部日本整形外科災害外科学会雑誌
    2007年 50 巻 3 号 411-412
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/21
    ジャーナル 認証あり
  • ―健側と患側の運動特性の比較―
    片岡 悠介, 山田 英司, 福田 航, 池野 祐太郎, 二宮 太志, 五味 徳之
    理学療法学Supplement
    2014年 2013 巻 0130
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに,目的】前十字靭帯(以下ACL)損傷者では,二次的に関節軟骨・半月板損傷を起こすことは一般的によく知られている。理学療法では,二次的損傷予防のために脛骨前方変位(以下ATT)の制動に配慮する必要がある。これまで,ACL損傷者では歩行や段差昇降において膝関節伸展モーメントが減少する特徴的な動作パターンが報告されている。これは,動作中にATTを生じさせる大腿四頭筋の働きを抑えることでACL不全膝に対する代償作用が働いていると考えられている。しかし,これは歩行や段差昇降という日常生活に直結する動作にみられるものであり,フォワードランジ(以下FL)のようなスポーツ動作において,報告しているものは少ない。そこで本研究の目的は,ACL損傷者を対象に,FL荷重時期の健側と患側に代償作用または特徴的な動作パターンが出現するか動作解析を用いて検討することである。【方法】対象は,ACL損傷患者18名とした(男性10名,女性8名,平均年齢23.2±6.7歳,身長167.1±9.8cm,体重64.2±12.8kg,損傷から測定までの期間4.1±2.8ヵ月)。取り込み基準は,対象肢を両側とするため一側は膝関節損傷の既往のない健常肢を有する者とし,除外基準は,疼痛などにより動作遂行困難である者とした。動作課題はFLとし,静止立位から片脚を前方に踏み込み,踏み込んだ姿勢から開始肢位に戻るまでの一連の動作とした。動作時の規定として,上肢は胸の前で組み,踏み込み時は踵から接地するよう指示した。踏み込み幅は棘果長の50%とし,動作速度はメトロノームを毎分80拍に合わせて2拍で踏み込み,2拍で開始肢位に戻るよう指示した。各被験者は測定前に練習した後,健側・患側それぞれ3回ずつ行い,3回の平均を解析対象とした。動作解析は,被験者に直径25mmのカラーマーカーを22点貼付し,4台のビデオカメラ(SONY社製HDR-HC7)で構成される三次元動作解析装置(東総システム社製Tomoco)と床反力計(AMTI社製AccuGait)を用いて行った。得られた結果から,関節角度は解析ソフトTomoco-VMを用い,関節モーメントは解析ソフトTomoco-FPを用いて算出した。なお,Tomocoにて算出した関節角度の信頼性はICC(1.1)が0.78,ICC(2.1)が0.80であった。解析項目は,荷重時期の膝関節伸展モーメントピーク値と,その時点の股関節モーメント,足関節モーメント,股関節屈曲角度,膝関節屈曲角度,足関節背屈角度,体幹傾斜角度,骨盤傾斜角度,足圧中心位置,荷重圧量とした。なお,得られたデータを正規化するため関節モーメントは体重で除した値を用い,関節角度は静止立位時を0°とした相対角度とし,足圧中心位置は足長で除した値を用いた。統計処理は,統計処理ソフトR-2.8.1を用いて,各項目の健側と患側を比較するためt検定を行った。有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,当院の倫理審査委員会(承認番号:2011-4)にて承認を得ている。対象者に対する研究の説明には研究説明書を用いて十分に説明し,研究に対する同意は書面で得た。また,対象者が未成年の場合にはその保護者についても同意を書面で得た。【結果】荷重時期の膝関節伸展モーメントピーク値は健側0.69±0.33Nm/kg,患側0.43±0.33Nm/kgと患側で有意に低い値を示した。この時点の股関節伸展モーメントは健側0.17±0.26 Nm/kg,患側0.42±0.33 Nm/kg,足関節底屈モーメントは健側0.78±0.21 Nm/kg,患側0.95±0.23 Nm/kgであり,いずれも患側で有意に高い値を示した。また,その他の項目において有意差はみられなかった。【考察】本研究結果より,患側において膝関節伸展モーメントピーク値は減少し,その時点の股関節伸展モーメントと足関節底屈モーメントは増大していた。膝関節伸展モーメントは大腿四頭筋,股関節伸展モーメントはハムストリングス,足関節底屈モーメントは下腿三頭筋に相対的に反映できるとされている。つまり今回の動作パターンは,ATTを制動しようとハムストリングスと下腿三頭筋の働きが高まった結果,大腿四頭筋の働きが弱まったのではないかと考える。また,身体重心の前方化が生じると前脚に加わる負荷が増大してくる。負荷の軽減,前方推進期の制動に対し,ハムストリングスと下腿三頭筋の活動性が高まった結果,股関節伸展モーメントと足関節底屈モーメントが増大したと考える。【理学療法学研究としての意義】患側の膝関節伸展モーメントピーク値の減少は,二次的損傷予防というリスク管理の点で有効的である。また,ACL損傷者における運動療法としてFLは有用的ではないかと考える。
  • 健側と患側の比較
    片岡 悠介, 福田 航, 五味 徳之
    理学療法学Supplement
    2010年 2009 巻 O2-121
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/25
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】前十字靭帯(以下ACL)損傷者では、二期的に関節軟骨・半月板損傷が起こることは一般的によく知られている。このため、二期的損傷の予防として損傷早期の手術が推奨されている。しかし、個人の事情等の理由から損傷早期に手術を受けることができない者も少なくはない。理学療法では、二期的損傷の予防のために脛骨前方変位(以下ATT)の抑制に配慮する必要がある。そのためには、膝屈筋・伸筋の同時収縮が必要とされており、ACL損傷者における膝屈筋・伸筋の筋活動動態が注目されている。その中でも歩行時における検討が多く、膝伸筋の筋活動低下や膝屈筋の筋活動増加が確認されている。特に、膝屈筋の筋活動増加に関しては、ATTに対する抑制作用として考えられており、重要な現象である。しかし、これは歩行等の軽負荷での活動であり、ジャンプ動作等の活動において、同様の現象を報告しているものは少ない。そこで本研究は、ACL損傷から手術まで待機期間があり、日常的にレクリエーションレベルのスポーツを実施している者を対象とし、片脚ジャンプ着地時における筋活動から、抑制作用について観察することを目的とした。

    【方法】対象はACLを損傷した5名の男性とした(平均年齢18.2±3.2歳、身長172.0±6.5cm、体重67.6±7.3kg、損傷から測定までの期間76.5±29.8日)。選択基準は、1.保存療法適応外である者、2.損傷後も日常的にレクリエーションレベルのスポーツを実施していた者、3.対象肢は両側とするため一側は膝関節損傷の既往のない健常肢を有する者とした。なお、除外基準は、1.30歳以上の者、2.着地動作時に疼痛などがある者とした。方法は20cm台からの片脚ジャンプ着地を健側・患側で3回ずつ行った。ジャンプ動作は、台上から両脚で踏み切り、20cm前方へ片脚にて着地するよう口頭指示した。この時、両上肢は下垂し、着地脚はビデオカメラに対し足部が前方を向くように注意させた。また、着地後は最終姿勢にて約3秒間は静止するようにした。片脚ジャンプ着地はビデオカメラ(SONY社製、DCR-TRV17K)を用いて前額面・矢状面の2方向から撮影したのち、ジャンプ着地後200msの股屈曲角及び膝屈曲角・外反角を画像解析ソフト(ImageJ)にて計測した。ジャンプ着地時の筋活動動態には筋電図(Noraxon社製筋電計)を用い、ジャンプ着地から200msまでの筋電図積分値(以下IEMG)を算出した。なお、被検筋は内側広筋(以下VM)、外側広筋(以下VL)、半腱様筋(以下ST)、大腿二頭筋(以下BF)とした。得られたIEMGは各筋の等尺性最大収縮(以下MVC)で正規化し、%MVCを算出した。統計処理にはStat Flex5.0を使用し、健側と患側でt検定を用いて比較した。有意水準は5%未満とした。

    【説明と同意】対象者に対する研究の説明には研究説明書を用いて十分に説明し、研究に対する同意は書面で得た。また、対象者が未成年の場合にはその保護者についても同意を書面で得た。

    【結果】ジャンプ着地後200msの股屈曲角は健側45.1±12.0度、患側39.6±12.6度、膝屈曲角は健側80.0±1.0度、患側82.5±5.9度であった。ジャンプ着地後200msの膝外反角は健側12.8±3.7度、患側11.6±5.4度であった。ジャンプ着地における各筋の%MVCは、健側でVM91.5±15.3、VL45.6±15.6、ST27.8±17.8、BF38.0±17.9であり、患側ではVM72.4±20.1、VL50.9±10.7、ST44.6±4.3、BF36.0±7.9となり、STのみ筋活動が有意に高値を示した。

    【考察】本研究より、ジャンプ着地時においてSTの筋活動が高値を示しており、Shelburneらが歩行において確認した現象と一致していた。これは、ACL損傷者における手術待機中において、二期的損傷に関連するATTへの抑制作用が出現していることが示唆された。また、膝屈筋においてSTのみに筋活動が増加していた。Palmieriらは、健常人のジャンプ動作において、内側ハムストリングに対する外側ハムストリングの筋活動増加が膝外反の増加に関連すると報告している。つまり、膝外反には内外側のハムストリングの筋活動バランスが重要と考えられ、本研究でBFに比べSTが高い筋活動を示したことは、膝外反を抑制するように作用していると考えられた。しかし、今回、ジャンプ動作時の膝外反において健側と患側に有意な差を認めなかった。これは、膝外反角の算出方法が、外反抽出に不向きな二次元による解析を行っているためと考える。したがって、三次元による解析を行い、膝外反の関連を再度検討することが必要である。さらに、本研究では対象者が5名と少なく、今後は、症例数を増やし発生率の調査等を検討したい。

    【理学療法学研究としての意義】本研究は、ACL損傷後約2ヶ月経過した者において、ATTの抑制作用が認められた。筋電図は、手術待機中におけるATTの抑制作用を観察するうえで有効な手段であると示唆された。
  • 福田 航, 横山 茂樹, 山田 英司, 片岡 悠介, 池野 祐太郎, 二宮 太志, 五味 徳之
    理学療法学Supplement
    2014年 2013 巻 0128
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/09
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    【はじめに,目的】我々は膝前十字靭帯(ACL)損傷者のスクワット中における表面筋電図から膝伸展筋の活動量が減少し,膝屈曲筋の活動量が増加することを報告した。また,この現象が半腱様筋腱を用いたACL再建術後5週でも継続することを明らかにした。このように再建術前後において膝屈曲筋の活動が増加していることは,再建靭帯に負荷の掛かる膝前方動揺を抑制する上で重要であると考えている。しかし筋電図のみの検討では,関節運動や荷重による影響を十分に把握することができていない。そこで本研究目的は,半腱様筋腱を用いたACL再建術前後におけるスクワット中の下肢関節運動と膝伸展モーメントの経時変化を測定することにより,スクワット中に膝関節の負荷がどのように変化するのかを明らかにすることである。【方法】対象は半腱様筋腱を用いたACL再建術適応患者11名(平均年齢24.8±6.8歳,男性8名,女性3名)である。課題は片脚スクワットとし,メトロノームを用いて80bpmのリズムで行った。片脚スクワット中の膝屈曲角度は50度までとした。上肢は胸の前で組み,反対側下肢の足部が身体後方になるようにした。測定時期は術前と術後9週時とした。機器はビデオカメラ(Sony社製,HDR-HC7)4台と床反力計(Anti Japan社製,AccuGait)1台を含む3次元動作解析装置(東総システム社製Tomoco)を使用した。直径25mmのカラーマーカーは22点貼付けた。関節角度と関節モーメントは解析ソフトTomoco-VM・FPを用いて算出した。なお,Tomocoにて算出した関節角度の信頼性はICC(1.1)が0.78,ICC(2.1)が0.80であった。計測項目は片脚スクワット中の膝伸展モーメントピーク値と,その際の体幹前傾角度,股屈曲角度,膝屈曲角度,足背屈角度,足圧中心位置(COP),股関節モーメント,足関節モーメントとした。なお,関節モーメントは体重で除した値を用いた。関節角度は立位時を0度とした相対角度を算出し,術後に膝完全伸展が困難な場合は立位時の下肢関節角度を計測し補正した。COPは足長で除した値を用いた。計測回数はスピアマンブラウンの公式から3回に決定した。分析方法は,健患及び術前後の2要因による分割プロット分散分析を用いて各関節モーメントの変化を検討した。さらに全ての指標における健患差及び術前後の変化をt検定で検討した。また各関節角度とCOPにおいては術前後変化量(変化量)を算出し,膝伸展モーメントの変化量との相関を求めた。統計処理ソフトにはR-2.8.1を用い,有意水準は5%とした。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は当院倫理審査会(番号:2011-4)にて承認を得ている。対象者と保護者には説明し書面にて同意を得た。【結果】全ての関節モーメントは健患差と術前後の2要因に主効果を認めたものの,交互作用は認めなかった。健患側の比較について,術前では患側が健側に比べて膝伸展モーメントが小さく,股伸展モーメントと足底屈モーメントが大きかった。術前後の変化では,健患側ともに膝伸展モーメントが低下し,足底屈モーメントが増加した。各関節角度は健患差及び術前後に変化が無かった。COPは術前で患側が健側よりも前方位であった。術前後の変化は,健側のみ前方に変位した。COPの変化量(前方を正)と膝伸展モーメントの変化量に負の相関(患側r=-0.71,健側r=-0.62)を認めた。【考察】健患側ともに術後にスクワット中の膝伸展モーメントが減少しており,手術による患側への影響は明確でない。しかし術前では患側のCOPは健側よりも前方にあり,術後では健側のみがCOPの前方化を認めたことから,患側の影響が健側にまで及ぶと考えた。健患側のCOP変化量と膝伸展モーメント変化量との間にそれぞれ相関を認めたことから,術後の膝伸展モーメント低下はCOPが前方へ変位した影響であると考える。つまり,健側ではCOPが前方へ変化することに伴い膝伸展モーメントの低下に繋がったと考えられる。しかし患側でもCOP変化量と膝伸展モーメント変化量の相関が強いにも関わらず術後にCOPの変化を認めなかった。これは,術前からCOPが前方位にある為,変化量は小さくなったことが起因していると考えた。術後の膝伸展モーメント低下現象は,再建靭帯に負荷の掛かる膝前方動揺を抑制する上で重要である一方,長期的に継続することは膝伸展筋力トレーニング効果の観点からも良い影響とはいえない。今後は,後方へのCOP(重心位置)のコントロールを考慮したスクワット法の導入時期を検討することが課題である。【理学療法学研究としての意義】膝伸展モーメントの低下現象は再建靭帯の保護というリスク管理の点からも有利であると考えられる。本研究成果は,再建靭帯が未成熟である術後早期での理学療法プログラムの安全性を考える上で重要な情報を提示している。
  • 第2報 13歳時から13年間における経過
    黒橋 佳洋, 紀平 為子, 島 欽也, 羽山 和生
    理学療法学Supplement
    2008年 2007 巻 1152
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】Schwartz-Jampel症候群(SJS)は安静時でも筋収縮が持続するミオトニアにより関節拘縮を生じ運動の俊敏性を妨げるが、病状進行は緩徐な筋疾患である。我々は、SJSの1例に対する13年間のPT経過を理学療法学第21巻第7号(1994年)で報告した。治療は主として関節拘縮予防を目的に施行した。治療経過中、中学校時より両股・膝関節の屈曲拘縮は進行したが、両肘関節の屈曲拘縮と脊柱側弯変形は認められなかった。ADL上、洗髪と靴下履きが困難であり、中学への通学は電動車椅子を使用した。今回の目的は、その後13年間におけるPT経過および関節可動域・筋力・筋肥大・歩行能力・ADLについて現状と比較検討することで、今後の課題を明らかにすることである。
    【対象】26歳、女性。身長146.0cm、体重52.0kg。勤務先へ普通乗用車で通勤。X線(脊柱・股関節)、心肺機能に特記事項なし。握力右側14.0kg、左側14.9kg。機能障害度(厚生省研究班)stageIIa、上肢機能障害段階分類(9段階法)1、ADL評価(厚生省神経筋疾患研究班)82/112点。なお対象者の方には、本報告の主旨を伝え快諾を得た。
    【経過】中学から高校時代にかけては体重増加と立位・歩行における両下肢の屈曲位と床上動作の緩慢さが目立った。しかし現在まで股・膝関節の屈曲拘縮は進行していない。19歳時、運転免許習得で右後方確認に問題が生じた。頸部右側自動回旋30°に対し、自動介助運動でROM改善をはかった結果、55°まで可能となった。他のROMでは両肘関節は5°屈曲拘縮に進行し、頸部屈曲は15°の著明な低下を認めた。また両前腕より手指にかけては自動運動が制限されてきている。ROM制限に対する手技は、最も改善自覚所見が高い強直筋へのマッサージと持続的筋伸張を用いている。筋力はMMTで現在、3レベルが両肩関節伸展・外旋 、両手関節・手指の全運動方向で、他は4以上であり、学童期の上肢>下肢筋力所見からは異なる経過を示した。周径は右大腿部(前回+2.5cm)以外の増減はみられず、さらに成人期以降は下肢に関してはミオトニアの持続もみられにくくなった。これらの所見より現在は、膝屈曲位に対して両膝伸展筋(MMT膝屈筋5、膝伸筋4)に筋疲労を考慮し筋力増強訓練を行っている。訓練終了後は片脚立位が安定し、歩行の立脚期下肢の支持性における自覚症状も改善されている。歩容は体幹の側屈が伴わなくなり、近年7年間の10m歩行における最大歩行速度平均は9.58±0.38秒で各年代間での統計学的な有意差は認めなかった。現在ADL上、洗髪は前方肘付き台にて自立し、靴下履きは割り座で可能となったが、足爪切りとおつりの受け取りが困難である。
    【考察】前回の報告から13年間の経過で、下肢屈曲拘縮の進行はなく歩行能力も保たれたが、両上肢のROM制限と筋力低下の進行への対応が今後のPT課題と考えられた。
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