理学療法学Supplement
Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O2-121
会議情報

一般演題(口述)
前十字靭帯損傷者における片脚ジャンプ着地時の下肢筋活動動態について
健側と患側の比較
片岡 悠介福田 航五味 徳之
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】前十字靭帯(以下ACL)損傷者では、二期的に関節軟骨・半月板損傷が起こることは一般的によく知られている。このため、二期的損傷の予防として損傷早期の手術が推奨されている。しかし、個人の事情等の理由から損傷早期に手術を受けることができない者も少なくはない。理学療法では、二期的損傷の予防のために脛骨前方変位(以下ATT)の抑制に配慮する必要がある。そのためには、膝屈筋・伸筋の同時収縮が必要とされており、ACL損傷者における膝屈筋・伸筋の筋活動動態が注目されている。その中でも歩行時における検討が多く、膝伸筋の筋活動低下や膝屈筋の筋活動増加が確認されている。特に、膝屈筋の筋活動増加に関しては、ATTに対する抑制作用として考えられており、重要な現象である。しかし、これは歩行等の軽負荷での活動であり、ジャンプ動作等の活動において、同様の現象を報告しているものは少ない。そこで本研究は、ACL損傷から手術まで待機期間があり、日常的にレクリエーションレベルのスポーツを実施している者を対象とし、片脚ジャンプ着地時における筋活動から、抑制作用について観察することを目的とした。

【方法】対象はACLを損傷した5名の男性とした(平均年齢18.2±3.2歳、身長172.0±6.5cm、体重67.6±7.3kg、損傷から測定までの期間76.5±29.8日)。選択基準は、1.保存療法適応外である者、2.損傷後も日常的にレクリエーションレベルのスポーツを実施していた者、3.対象肢は両側とするため一側は膝関節損傷の既往のない健常肢を有する者とした。なお、除外基準は、1.30歳以上の者、2.着地動作時に疼痛などがある者とした。方法は20cm台からの片脚ジャンプ着地を健側・患側で3回ずつ行った。ジャンプ動作は、台上から両脚で踏み切り、20cm前方へ片脚にて着地するよう口頭指示した。この時、両上肢は下垂し、着地脚はビデオカメラに対し足部が前方を向くように注意させた。また、着地後は最終姿勢にて約3秒間は静止するようにした。片脚ジャンプ着地はビデオカメラ(SONY社製、DCR-TRV17K)を用いて前額面・矢状面の2方向から撮影したのち、ジャンプ着地後200msの股屈曲角及び膝屈曲角・外反角を画像解析ソフト(ImageJ)にて計測した。ジャンプ着地時の筋活動動態には筋電図(Noraxon社製筋電計)を用い、ジャンプ着地から200msまでの筋電図積分値(以下IEMG)を算出した。なお、被検筋は内側広筋(以下VM)、外側広筋(以下VL)、半腱様筋(以下ST)、大腿二頭筋(以下BF)とした。得られたIEMGは各筋の等尺性最大収縮(以下MVC)で正規化し、%MVCを算出した。統計処理にはStat Flex5.0を使用し、健側と患側でt検定を用いて比較した。有意水準は5%未満とした。

【説明と同意】対象者に対する研究の説明には研究説明書を用いて十分に説明し、研究に対する同意は書面で得た。また、対象者が未成年の場合にはその保護者についても同意を書面で得た。

【結果】ジャンプ着地後200msの股屈曲角は健側45.1±12.0度、患側39.6±12.6度、膝屈曲角は健側80.0±1.0度、患側82.5±5.9度であった。ジャンプ着地後200msの膝外反角は健側12.8±3.7度、患側11.6±5.4度であった。ジャンプ着地における各筋の%MVCは、健側でVM91.5±15.3、VL45.6±15.6、ST27.8±17.8、BF38.0±17.9であり、患側ではVM72.4±20.1、VL50.9±10.7、ST44.6±4.3、BF36.0±7.9となり、STのみ筋活動が有意に高値を示した。

【考察】本研究より、ジャンプ着地時においてSTの筋活動が高値を示しており、Shelburneらが歩行において確認した現象と一致していた。これは、ACL損傷者における手術待機中において、二期的損傷に関連するATTへの抑制作用が出現していることが示唆された。また、膝屈筋においてSTのみに筋活動が増加していた。Palmieriらは、健常人のジャンプ動作において、内側ハムストリングに対する外側ハムストリングの筋活動増加が膝外反の増加に関連すると報告している。つまり、膝外反には内外側のハムストリングの筋活動バランスが重要と考えられ、本研究でBFに比べSTが高い筋活動を示したことは、膝外反を抑制するように作用していると考えられた。しかし、今回、ジャンプ動作時の膝外反において健側と患側に有意な差を認めなかった。これは、膝外反角の算出方法が、外反抽出に不向きな二次元による解析を行っているためと考える。したがって、三次元による解析を行い、膝外反の関連を再度検討することが必要である。さらに、本研究では対象者が5名と少なく、今後は、症例数を増やし発生率の調査等を検討したい。

【理学療法学研究としての意義】本研究は、ACL損傷後約2ヶ月経過した者において、ATTの抑制作用が認められた。筋電図は、手術待機中におけるATTの抑制作用を観察するうえで有効な手段であると示唆された。
著者関連情報
© 2010 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top