【はじめに】厚岸町では、2000年5月保健福祉総合センター(以下センター)の開設と共に、センター内にある健康増進室で、体力テストが実施できるようになっている.この設備を使って、2001年から毎年S高校1年生の
総合的な学習の時間
(健康増進)の授業の中で体力テスト及び講評を実施している.今回はこの体力テストによるS高校1年生の体力特質、今後の課題について検討した.
【対象】2001年5月16日~2008年9月1日までの間に体力テストを受けた、S高校1年生649名中、評価可能な生徒620名(男子239名、女子381名)である.
【方法】文部科学省が平成11年度より用いた新体力テスト法により実施し、新・日本人の体力標準値2000に基準値(以下基準値)のある、身長(cm)、体重(kg)、握力(kg)、垂直とび(cm)、体前屈(cm)、上体おこし(回/30秒)を比較検討した.統計処理の方法としては、5段階評価を採用した.(評価1:~-1.5SD、 評価2:-1.5SD~-0.5SD、評価3:-0.5SD~+0.5SD、評価4:+0.5SD~+1.5SD、評価5:+1.5SD~)
【結果】評価1は男子上体おこし2002年度・2003年度・2005年度である.
評価2は男女握力全年度、男子垂直とび2006年度を除く、2001年度~2008年度、女子垂直とび2006年度・2007年度を除く2001年度~2008年度、男子体前屈2001年度・2004年度を除く2001年度~2008年度、女子体前屈2001年度・2007年度・2008年度を除く2001年度~2008年度である.男子上体起こし2001年度・2004年度・2006年度、女子上体起こし全年度である.評価3は男女身長全年度、男子体重2005年度・2006年度、女子体重全年度である.男子垂直とび2006年度、女子垂直とび2006年度・2007年度である.男子体前屈2001年度・2004年度、女子体前屈2001年度・2007年度・2008年度である.評価4、評価5は男女共に該当する項目がなかった.
【まとめ】S高校1年生の体力特質は、16歳の日本人の平均値と比較して、2006年度、2007年度、2008年度の男子身長、女子体重以外はすべて平均値以下であった.筋力、瞬発力、柔軟性、体幹筋力が平均値以下であるということになる.中でも男女ともに体幹筋力の低下があり、特に男子の体幹筋力は著しく低下している.椅座位での姿勢保持には、体幹筋力が必要であり、授業中に正しい椅座位姿勢維持が困難な原因の1つではないのだろうか.この結果をふまえて、高校生予備軍としての小中学生に対しても、厚岸町教育委員会と協働してPTAや教員に働きかけている.また、地域の公教育にどのように係わっていけるのか、今後、理学療法士の職域として大きな課題であろう.
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