【目的】
平成20年5月24日オートバイで転倒し、右肩関節の外科頸を骨折.その後、肩関節の静止時及び動作時痛の為、右肩関節可動域が制限され、ADLおよびIADL動作に支障が起きた.
MTAにより右肩関節の痛みの軽減を図るとともに、ADL動作・IADL動作が円滑に実施できることを目的とし、本人、家族に説明及び同意を得て実施をした.
【方法】
右肩関節屈曲及び屈曲位からの伸展動作時の痛みに対する1回の治療時間は約5~15分.施行頻度は週2回~3回行った.
原因筋線維に対しMTA基本手技の静的及び動的施行法を行った.
【結果】
1回目のMTA施行直後には静止時痛が消失し、その後も出現しなくなった.また、肩関節の強い運動時痛は主に屈曲最終域及び、屈曲位から伸展する際にみられたが治療直後に消失し、自動運動での可動域が改善された.その後、2回目の治療日までのMTAを実施しなかった期間に、肩関節運動時痛が出現し、関節可動域は減少した.2回目の治療では再び改善が認められた.結果として、日常生活上で必要な動作は円滑に行えるようになった.
【考察】
本症例は、オートバイ事故による右肩関節外科頸骨折により、右肩関節の不動状態が続き、循環不全が起き、痛みが発生し、右肩関節の可動域制限が起きたことが推測される.某病院を7月24日退院時は、自動運動で肩関節屈曲可動域は100度の状況だったが、肩関節痛が悪化し7月31日には肩関節屈曲の自動運動での可動域が30度に減少した.
7月31日MTA初回施行直後に痛み、及びROM制限に即効的な改善が認められた.MTA施行から、効果が出現するまでの時間である潜時は、非常に短時間であった.しかも、MTA実施以外の日に、改善効果が見られなかった症例に、MTA施行直後から関節可動域が改善したことから、改善効果は、MTAによる効果の可能性が高いと推測される.強い肩関節痛は肩関節屈曲最終域及び肩関節屈曲位からの伸展動作時に起こった.この痛みが循環不全を起こし、運動の阻害要因になっていると考えられた.
MTAを行なう事で自動運動時の痛みの軽減、消失が見られた.このことにより血流が改善され、栄養や酸素の供給が行なわれたことが、動作環境を整えたと考えられる.
【まとめ】
MTAは痛みを軽減あるいは消失させる事のできる手技の一つであり、痛みのために十分な可動域を確保できず、随意運動が十分行なえない症例に対し、効率的に運動療法を行っていく上で有効な手技と思われる.
抄録全体を表示