従来, 製紙用薬品 (サイズ剤, 紙力増強剤) の性能の発現は, 紙中にどれだけの薬品が何%含有されているかという “量” の影響が大きいと考えられてきたため, 性能評価の一環としては, “量” の評価が行なわれ, 実際に定着している “形” については, 深い検討はなされていなかった。これは, 従来の分析技術では, パルプの微細な構造の観察, パルプ上での薬品の形態や分布について, 自然な状態で知る事が容易ではなかったという事情もあった。
近年の分析技術の発達により, 紙・パルプの表面について, 常圧あるいは低真空下で詳細な分析が容易に行なえるようになり, ミクロフィブリル上の薬品の観察などの分析が可能になってきた。
本報では, XPS (X線光電子分析装置), SPM (
走査型プローブ顕微鏡
) などの機器を用いて行なっている表面紙力増強剤やAKDサイズ剤, ロジン系サイズ剤, 表面サイズ剤のパルプ繊維上での形態や分布状態について検討の現状を報告する。
SPMを用いた分析では, サイズ剤, 紙力増強剤などの薬品が効果を発揮しているときには, 薬品がミクロフィブリルを覆って太くなるように見える現象が観察された。サイズ剤, 紙力増強剤などの薬品が性能を発揮するためには, パルプ上で広がりやすいことが重要な物性であると視覚的に確認できた。
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