歯周病はプラークおよびその他の口腔内因子に起因する炎症性疾患である。歯周病の病因論に対する考え方がここ数十年間で大きく変化した結果, 歯周病の治療を成功に導くためには患者の口腔内管理状態の向上が重要であることが再認識されている。
本研究の目的は, 動機づけに際して通常のブラッシング指導に加えて, 口臭測定および定量的PCR法による細菌検査を行うことによる口腔内への影響について検討することにある。
被験者としては, 日本大学松戸歯学部付属病院歯周科に来院した60名の慢性歯周炎患者を選択した。60名の被験者は, N, A, B, C群の4つ(各群15名)に分け, 術前の歯周組織検査の結果から各群間の検査値の標準化を行い, ブラッシング指導前後の歯周組織検査の改善程度を比較検討した。N群は通常のブラッシング指導, A群は通常のブラッシング指導に加えてブレストロンを用いた口臭検査, B群は通常のブラッシング指導に加えて
Prophyromonas gingivalis,
Tannerella forsythensis,
Aggregatebacter actinomycetemcomitansについて定量的PCR法による細菌検査, C群は通常のブラッシング指導に加えて口臭検査と細菌検査を行った。
歯周基本治療後の歯周組織検査の結果は, すべての群で初診時に比べ改善を認めた。各群間の比較ではPlaque control record(PCR %)はN群に比べA, B, C群で有意な減少を認めた(
p<0.05)。一方, Probing depth, Bleeding on probingでは減少程度に各群間での差異を認めなかった。
本研究の結果から, 歯周基本治療のブラッシング指導の際に口臭測定および細菌検査を加えて実施することで, 患者のモチベーションの向上が図られ, 歯周基本治療の効果がさらに高まることが考えられた。
日本歯周病学会会誌(日歯周誌)52(1) : 37-45, 2010
抄録全体を表示