本研究は二人
非ゼロ和
ゲームの逐次選択方式によるゲーミングの研究を目的としている. 実験はプリゾナーズ・デレンマ・タイプのマトリックスを用い, 比較のための通常の同時選択方式と逐次選択方式により, 中学生を被験者としてゲームを20試行行なった. 逐次選択方式とは, 一試行が次のような経過をもつ. プレイヤー二人のうち一方が先行者として先に選択を決定し, それを後行者に知らせる. 後行プレイヤーは先行者の選択を確認してから自分の選択を決め, それを先行者に知らせて二人の利得が決定される. 本研究はこの逐次選択方式のゲーム結果, ゲーム行動の検討に加えて, さらにプレイヤーが選択決定する際の選択動機の分析をプレイヤーに直接問う形で調査し, ゲーム行動の動機的側面を明らかにすることを目指した.
結果は次の点を明らかにしている. 逐次選択方式のゲーミングは共栄関係の実現率が高く, 特にインタラクションを重ねるとともに, 増加傾向を示すこと, 逆に共貧関係は減少傾向を示すこと, これは同時選択方式のゲーミングと比較すると, 対称的な傾向であること, またいわゆる協同解が, 同時選択方式に比較して高く, 試行を追って増加傾向を示すことなどである. これらの点にさらに動機的側面からのアプローチを加えて考えると, 逐次的なインタラクションはゲームを共栄関係実現の方向に促進させ, プレイヤーの協同的, 利他的動機を誘発させ, 利己的, 防衛的動機を抑える方向に働きかけ, 協同解選択率を高めさせるように作用していることが示唆される.
選択動機に関しては, 同時選択におけるいわゆる協同解は, 協同的動機と利他的動機との二つの動機のいずれかから選択されることが多く, またいわゆる競争解は, 利己的動機と防衛的動機とのいずれかから選択されており, ともに一つの動機と結びつけるわけにはいかないことが明らかにされた. 他方, 逐次選択方式における先行条件の協同解は, 協同的動機から選択される率が高い. 先行条件の競争解は, 同時選択方式同様, 利己的動機と防衛的動機の二つが高率を示している. さて最も, 選択行動と動機とが一対一対応しているのは, 逐次選択方式の後行条件である. 先行者が競争解は利己的動機と防衛的動機とに分かれているが, 他の三条件においては, かなり高率で一対一対応する. 先行者が協同解のときの後行者の協同解は協同的動機から, 他方先行者が競争解のときの後行者の協同解は同じ協同解ではあるが, 利他的動機から, また先行者が協同解のときの後行者の競争解は利己的動機からという対応がかなり明確にされている.
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