【はじめに、目的】 近年の情報通信技術(Information and Communication Technology 以下,ICT)の発展に伴い,コンピュータを使用した学習システムが発達した.ICTを用いた学習ツールの1つである電子
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は,コンピュータの画面をそのまま提示できる・大画面提示されている・その画面に手書きができるものと定義されている.電子
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を用いた講義は,プロジェクタを用いた講義よりも,「講義の内容が理解できた」「教科書やノートのどこを説明しているかがよくわかった」等の項目において効果的だとされる.しかし,電子
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を学校教育へ導入する際には政策レベルでの補助が必要である.また,講義の形態によっては超大画面への書き込みや,遠隔操作機能が必要な場合があり,電子
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には多様な機能が求められている.今回の目的は,プロジェクタやスクリーンといった従来のインフラを利用した安価で多様な機能を持つ電子
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の構成を明らかにし,電子ペンの開発と電子
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の試用を行うことである.【方法】 電子
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に求められる機能を,従来のインフラを利用できる・安価である・持ち運び可能である・ポインタ提示と遠隔操作が可能である・講義をデータ化できる,の5点とし,機能を実現する電子ペンを開発した.電子ペンの赤外線LED部は(TSAL6400 Vishay社製とOSI5FU5113A-40 OptoSupply社製)を使用した.開発した電子ペンを用いた電子
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による講義を63名に対して実施した.講義後,電子
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に関するアンケートを実施した.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は藤田保健衛生大学疫学・臨床研究倫理審査委員会の承認を得て実施した.【結果】 電子
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に求められる5点の機能を実現する電子ペンを1種類開発した.また,遠隔操作や文字描写機能に特化した電子ペンを8種類開発した.アンケート結果は「大学に入学後,講義の進行速度が自分にとって明らかに速すぎると感じた事はありますか?」という質問に対して,「非常にある」または「ある」と答えた学生は71.4%であった.電子
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を使用した講義において,「教科書やノートのどこを説明しているかがよく分かりましたか?」「講義の内容が理解できましたか?」「集中して聞くことができましたか?」という質問に対して,「とてもそう思う」または「そう思う」と答えた学生はそれぞれ63.5%,61.9%,77.4%であった.【考察】 電子
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は講義の形態や目的に応じて使い分けることが必要であり,今回開発した複数の電子ペンはそれに対応すると考える.従来の講義の進行速度を速すぎると感じる学生は多く,講義のデータ化は有用であると考える.電子
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が説明や理解の助けになったと学生・教員共に回答しており,説明のための書き込みが残存する機能や,電子ペンによる視線誘導が効果的に働いたと考える.【理学療法学研究としての意義】 学生数の増加・学習内容の高度化に伴い,理学療法士の質の低下が危惧されている.従来の講義と比較し,電子
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は学習効果・環境効率の点で優れているとされる.本研究では,電子
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の構成を明らかにし,電子ペンの開発と試用を行い,高い学習効果を持つことが示唆された.これは理学療法士の質を高める一助になると考える.
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