高齢者膵癌の臨床病理学的特徴を明らかにするために, 膵癌剖検257例(男160例, 女97例, 平均68.2歳) を70歳以上の高齢者群136例と69歳以下の対照群121例に分けて比較検討した.
男女比は高齢者群1.2:1, 対照群2.6:1で, 高齢者群では女性例が多かった. 初発症状は, 両群とも腹痛が約1/3にみられ, 以下食思不振, 黄疸等の順であり, 両群間に差はみられなかった. 切除率は対照群 (24.0%) で高齢者群 (10.3%) より高かった. 平均病脳期間は高齢者群5.71カ月, 対照群6.01カ月で両群間に差はみられなかった.
占拠部位は, 頭部癌: 体尾部癌が高齢者群1.6:1, 対照群1.2:1で両群間に差はみられなかったが, 80歳以上に限ると2.8:1と頭部癌がやや多かった. 組織学的分類は, 両群とも膵管癌が約90%を占めた. 膵管癌の分化度には両群間に差はみられなかったが, 80歳以上では分化度の高い癌がやや多かった. 転移・浸潤は両群ともに肝, 腹膜, 肺の順にみられ差はなかったが, 80歳以上の例では肝転移およびリンパ節転移の頻度が低かった. 重複癌は高齢者群の8.8%, 対照群の9.1%にみられた.
以上の結果より, 高齢者を70歳以上と定義すると, 膵癌の生物学的性状には対照群との間に大差がみられなかった. 80歳以上に限定すると, やや悪性度が低い傾向がみられた.
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