吸血昆虫の唾液中には血管拡張物質および抗血液凝固物質が含まれている。我々は, 蚊唾液中に含まれるこれら多様な物質の役割や性状を明らかにするために, Anopheles stephensi雌成虫を用いて, 羽化後の唾液腺蛋白の変化, および吸血前後の唾液腺の形態などを経日的に調べた。その結果, 唾液腺蛋白の量は羽化後3日間に増加傾向を示した。そして吸血後は, 唾液腺外葉の容量が著しく減少すると同時に, 構成蛋白のうちいくつか(33,35,40,45,70kDaの蛋白
バンド
)が減少した。この減少傾向は吸血3日後に回復した。同様の実験をヒトスジシマカAedes albopictus, アカイエカCulex pipiens pallensの雌成虫を用いて行ったが, 吸血前後の唾液腺の形態, および電気泳動による唾液腺蛋白の量には変化が認められなかった。3種類の蚊が吸血したそれぞれのマウスの血液中には, 抗唾液腺IgG抗体が誘導され, それらのおおよその分子量は, An. stephensiでは130kDa, アカイエカでは66kDaであった。ヒトスジシマカでは, マウスの血液中に抗体の誘導がELISAで認められた。しかし抗原の分子量をSDS-PAGEで特定することができなかった。このような傾向は, 主要組織抗原の異なる3系統のマウスを使ったす抗体の誘導実験で, 同様に認められた。
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