顎骨壊死(ORNJ)は,放射線療法(RT)を受けた頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)患者に認められる最も重篤な晩期合併症の一つである.治療前にORNJのリスクを予測することができれば,治療方法のさらなる最適化やORNの早期徴候のモニタリングが可能になるため,ORNJの予測は大きな関心を集めている問題である.ORNJの発症率は低く,大量の患者データを収集することは困難である.そのため本研究では,放射線治療前のCT画像とRT線量分布を入力データとして用いたAnoGANによる異常検出によりORNJの発症の有無を予測する.神戸大学医学部附属病院で収集された患者データ486名(ORNJ発症58名, ORNJ非発症428名)のデータを用いて実験を行い,ROC-AUC 0.72と
F
値
0.64の
精度
でORNJの発症を予測できることを確認した.ResNet50による2クラス分類
精度
(
F
値
0.51)との比較から異常検知の有効性を示した.また,CT画像のみで学習したAnoGANの予測
精度
(ROC-AUC 0.53,
F
値
0.68)との比較からはRT線量分布がORNJの発症予測に有用であることが確認できた.これらの予測
精度
は実用に足るものではないため,今後は,顎骨の含まれないスライスの除外や,ORNJ危険因子に関する臨床情報を組み込んだ予測などによりさらなる
精度
の向上を図る必要がある.
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