炭素チューブ原子化装置を使用し,鉛の原子吸光分析を行なった。外径6.35mm,長さ70mmの炭素棒を加工し,内径2.5~5.0mmの炭素チューブを作製した。感度は内径が小さいほど,変動係数は内径が大きいほどよい結果を得た。本研究では再現性や試料挿入の容易さなどから,内径4.0~4.5mmの炭素チューブを使用した。原子化装置に流し込むガスの種類について検討した結果,アルゴン,窒素,ヘリウムと空気のピーク吸光度比は1:1:0.9:0。7であった。またこれらのガスの流速によってもピーク吸光度に影響を与え,流速増加によって吸光度は減少した。
鉛を同量にたもち,試料容量を5μlから40μlに増加させると,10μlまでは吸光度に変化はないが20μl以上になると感度は減少した。試料容量5μlおよびアルゴン0.4l/minの流速で鉛の(5~50)x10-10gの範囲でわずかに直線からずれる検量線を得た。検出限界は6.5x10-11g,変動係数は2.8%であった。
鉛の100倍量の元素による干渉はほとんど認められないが,1000倍では若干の元素が大きく干渉する。
つぎに本法を用いて海水中の鉛の定量を試みた。鉛はDDTC-DIBK系に抽出し,有機相の10μlを測定試料とした。静岡県駿河湾海水で1.7~8.0ppbの値を得た。
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