直腸癌術後局所再発の因子として,従来より壁深達度,リンパ節転移,外科的剥離面,脈管侵襲などがあげられていたが,外科的剥離面に関係していると考えられる神経浸潤が局所再発に強く関係していた,1979年から1988年までに治癒切除となった直腸癌155例を臨床病理学的に再検討した結果,局所再発は16例(10.3%)に見られた,検討因子として性別,年齢,占居部位,肉眼型,治癒切除,術式,組織学的壁深達度,リンパ節転移,Dukes分類,脈管侵襲,組織型,ew,神経浸潤を挙げ,その各因子と局所再発の関係を統計学的に検討した.性別,年齢,占居部位,肉眼型,治癒切除,術式,組織型は統計学的には局所再発に関係がなかった.組織学的壁深達度ではpm・alss群とa2s・alsi群の間に有意差(p<0.01,X
2=14.298)が,リンパ節転移は陽性群と陰性群の間に有意差(p<0.01,X
2=6.708)が,Dukes分類ではA・BとCの問に有意差(p<0.01,X
2=7.079)が,脈管侵襲は陽性群と陰性群の問に有意差(p<0.05,X
2=4.081)が,神経浸潤では陽性群と陰性群の間に有意差(p<0.01,X
2=20.239)が各々認められた.X
2値からみて最も局所再発に強く関係している因子は神経浸潤であり,ついで壁深達度であった.神経浸潤はewに関与し,局所再発を修飾するものであるが,その特性ゆえに,より深く壁外に浸潤する可能性があり,局所再発の1因子と考えられる.
抄録全体を表示