【目的】医療従事者に課せられた課題として,高度・先端医療と福祉行政の狭間に存在する多くの問題を解決するための施策が求められている.これから医療従事者を目指す者やすでに医療従事者として現場に出ている人材に対して,人的資源の有効活用と生涯学習政策の一環として,隣接領域に関連する積層型資格を取得することで付加価値を高め受益者に質の高いサービスを提供することは,21世紀の当初の目標としてきわめて有効なものとなる.国民に信頼され期待される医療従事者を目指して自己研鑽に励む者にとって,付加価値の高い知識や技術を修得する機会を得ることは,個人の努力では限られたものとなってしまう.したがって既存の資格や技術を身近で学習する機会を提供することの意義は大きい.自らの専門性を基盤にしながら,質の向上につながる,いわゆる,「積層型資格等による
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プログラム」開発事業は,上記の背景を勘案して計画されたものである.
【実施方法】本調査・研究事業は,平成14年度に文部科学省生涯学習政策局の「専修学校社会人
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教育推進事業」として採択された「医療技術者養成のための社会人専門教育プログラム開発」事業を引継ぎ,平成15年度に,より具体的な課題として「医療技術者養成のための積層型資格
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プログラム開発」事業に発展させたものである.本委員会に,積層型
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推進分科会,CBT教育システム分科会,実証講座等企画分科会を設置し,理学療法士の
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を目的とした調査を行い,実証講座として「福祉住環境コーディネーター」,「国際形態計測技術(ISAK)」の実証講座を実施した.また,上記に関連したCBT教材を開発し遠隔教育システムを用いて検証講座も実施した.
【結果】調査結果から,現場の理学療法士・作業療法士のなかに職場で活用できる関連領域の知識,技術の修得に対する潜在的要求が極めて高いことが明らかになった.また,新たに開発したCBT教育ツールを利用することにより,時間に制約されない安価で良質な教育プログラムを提供できる可能性が示唆された.
【考察】事業の実施にあたっては,専門学校6校,協力医療施設2機関および研究機関,企業,特定非営利活動法人等の有識者による延べ21名の実施委員会・分科会委員の協力を得た.社団法人日本理学療法士協会,社団法人日本作業療法士協会等,多くの団体・組織の方々にご協力をいただいた.また,文部科学省生涯学習政策局及び福島県学事課から適切な指導と助言をいただいた.今後は本事業の結果を踏まえ,理学療法士養成のための卒前教育と
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・キャリアチェンジのための生涯学習プログラムの効率化を模索したい.
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