矢状面, 冠状面での形態がX線の投影像により比較的に正確に把握されるのに対し関節の回旋や長管骨の捻転などの捻れの異常は隣接関節の変形の原因となる可能性があり, 自然矯正も期待できないにも関わらず計測が困難なため注目されることが少なかった.CTによる断面像からの計測が可能となった現在もその計測基準線となる横軸の設定が種々みられ計測値の比較を困難にしていた.このため下肢のCTによる鮮明な断面像を撮影, 作図し膝関節の回旋角, 脛骨の捻転角を測定した.特に脛骨中枢端では新しい横軸設定法を考案しその測定結果として膝関節外旋角9.20°±2.40°, 脛骨外捻角28.3°±6.21°を得た.この膝関節外旋角はscrew form movementの概念と一致した数値であり, 脛骨外捻角も従来の回転断層撮影などの方法での報告の数値内にあるものであった.健常肢20肢についてはCTによる脛骨後接線法と工藤による膝蓋靱帯内縁を採る方法 (工藤法) での計測値と比較, 検討した.その結果は膝関節外旋角では昭大法, 脛骨後接線法, 工藤法の順で約6°ずつ小さな値を得た.脛骨外捻角ではこの順に約6°ずつ大きな値を得た.これは膝関節から足関節までを一連としてみた場合にほぼ同じ数値の捻れを測定したと考えられる.またその時の標準偏差 (SD) はほぼ同程度ではあるが昭大法によるものが最も小さく精度の確認がおこなわれたと考えた.その後20肢を追加し40肢をcontrol群とし,
変形性膝関節症
76肢 (以下OA群) の膝関節外旋角, 脛骨外捻角を測定, 比較した.またこれらの数値に影響すると考えられる年齢, 膝関節外側角と
変形性膝関節症
例では高橋分類との相関関係を調査した.膝関節外旋角ではcontrol群10.14°±3.29°, OA群8.29°±4.59°とOA群がやや低下していたがその有意差は認めなかった.脛骨外捻角はcontrol群23.4°±8.43°でこれに比べOA群は17.6°±6.94°と低下しておりその間には有意差を認めた, しかしcontrol群, OA群を10才ずつに分けてその脛骨外捻角を比較してみるとその間には有意差は認めなかった.またcontrol群で年齢と脛骨外捻角の相関関係をみると強い相関を認めた.OA群では年齢と脛骨外捻角には相関はほとんど認めなかった.このことから正常者では脛骨外捻角は年齢とともに減少し, 膝関節OA例では変化の大きい数値をとる場合が多いといえた.OAの進行度と膝関節外側角 (FTA) は強い相関関係を認めた.そのほかの膝外旋角, 脛骨外捻角, 年齢, FTA, 高橋分類では相関を認めなかった.
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