【はじめに、目的】
腰痛の再発予防ではセルフマネージメント 戦略の獲得が重要である。しかし患者の理学療法に対する理解が乏しく、セルフマネージメント戦略への獲得への需要がなければ、理学療法士との協働によるセルフマネージメント戦略の獲得は困難である。そこで本研究では地域在住の一般人の腰痛に対する理学療法への認識と理学療法士に求めるもの、そして腰痛予防のセルフマネージメントの実態を半構造化インタビューにより調査・分析した。
【方法】
量的調査と半構造化インタビューを埼玉県某地域在住の18歳以上の日本語を第一言語とする者19名に実施した。量的調査では腰痛の症例を提示し、その症例に対する理学療法業務をリストから選択してもらい正答率を出した。半構造化インタビューは1対1で実施し、理学療法に求めるもの、そして腰痛対策・予防として行っているセルフマネージメント戦略とその情報の出どころを調査した。分析は主題分析を行った。コーディング・分類は6名の共同研究者の 合意が得られるまで繰り返した。
【結果】
量的調査で全問正解した人の割合は14.3%であった。理学療法士に求めることについての半構造化インタビューでは、5つのテーマが抽出された。また腰痛のセルフマネージメントに関して、腰痛対策を実施している対象者の割合は87.5%であり、12個の戦略と3つのテーマが抽出された。
【考察】
理学療法業務の中で認知度が低かったのはスクリーニング検査系、
心理社会的アプローチ
の項目であった。理学療法士に求める5つの項目の内「社会的観点」や 「身体生物学的観点」からは生物
心理社会的アプローチ
の必要性が裏付けられた。腰痛予防・セルフマネージメントは大半の対象者が実践しており、12個の戦略の内5つは先行研究で推奨されるマネージメント戦略と一致していた。ただ妥当性のある 5戦略の中で理学療法士から提供されたものは2戦略のみで、また理学療法士と協働して自ら効果を実感し、予防戦略としている者は1名のみであった。そのため腰痛への理学療法介入の実態、患者のセルフマネージメント獲得に対する理学療法士の役割の認識を今後調査する必要があると考えられた。
【結論】
理学療法士業務を正確に理解している地域在住の一般人は僅かであった。理学療法士には生物
心理社会的アプローチ
が求めらることが分かった。腰痛のセルフマネージメントは多くの媒体から情報がもたらされていることが分かった。
【倫理的配慮】
埼玉県立大学研究倫理委員会の承認を得た (承認番号22830番)
抄録全体を表示