人間行動や生物の行動における利他的な協力行動の進化を考えるための枠組みとして
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理論は非常に大きな成功を収めてきた.シンプルであっても協力行動を誘発するような構造をもった
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を考えることは,協力行動の進化を理解するにあたって非常に意義がある.本研究では,階層性のあるシンプルな
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によって協力行動が誘発され,
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のプレイヤーの集団が進化的に興味深い振る舞いをすることを示す.ここでの階層性のある
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とは,グループ内の駆け引きと,一つ上の階層のグループ間の駆け引きという異なる|階層での駆け引きが,フラストレートするような
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のことである.この
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では,プレイヤーはグループ間の競争に勝つためには多くのコストを支払わなければならないが,グループ内の他のプレイヤーよりは少ないコストで利益を得たいというジレンマに陥る.
先行研究として,経済学の分野でRapoport and Amaldoss(1999)の
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がある.彼らの
ゲームでは公共財ゲーム
において,協力行動を促進させるためにグループ間競争を導入した.本研究では彼らが導入したグループ間の競争が,
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にどのような影響を与えるのかに焦点をあて議論する.階層構造が導入された
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を行う集団は,報酬パラメータによって協力戦略と非協力戦略の共存が可能であり,環境変動に対して進化的なヒステリシスを持つことがわかった.また,Rapoport and Amaldoss(1999)の先行研究では同時に競争するグループ数は2つであったが,複数グループまで拡張して解析的に解き,複数のグループ間競争が
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に与える影響も同時に考察する.
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