抄録
本稿では倉橋惣三の執筆・関連文献の講読により,倉橋の児童画観・図画教育論の具体的内容及び先進性を明らかにすると同時に,芸術教育との関連について検討を行った。その結果,倉橋の児童画観・図画教育論における先進性は,第一に児童画を心理学的観点から「子どもの表現として」理解及び評価した点であることが示された。また,倉橋の児童画に求めた芸術性とは,幼児の生活から生じる自発創造であり,「美の普遍律」ではないことが明らかとなった。一方,倉橋の児童画観と図画教育論は,その土台に文化教育への貢献としての「幼稚園に於ける芸術教育」があり,究極的には「人間性の完成」また「文化の発展」に結びつくものと受けとめられる。現代においても倉橋の児童画観とその教育法に関する思想が取り上げられる理由は,これら倉橋の先進性に加えて芸術教育や文化教育を含む展望によると考えられる。