抄録
本論は,自己と矛盾した環境で表現を行う際に,生徒自身が困難を学びに変えるという視座に立ち,高校生の共同制作や相互鑑賞などの分析を行う。自己が環境と関わりながら制作する過程では,思い通りにならないことや,自分と友達との表現主題の違いによるジレンマなどの困難が生じる。それらをふまえて表現する中で,不都合なことを自らの学びに変えていく過程を見取ることを試みた。結果,環境や他者との間に生じた困難を表現の新たな視点や気づきに変える事例を観察することができた。そして,困難への対応の判断によって,生じる学びが異なることや,造形を介して自らの思いと相違する事象を面白いと感じようとする雰囲気が,自らが想定していない新しい価値へと向かう一助となることを具体的事例を伴って考察した。