日本食品科学工学会大会講演要旨集
Online ISSN : 2759-3843
第72回 (2025)
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シンポジウムB1: 地域食品研究のエクセレンス (全国食品関係試験研究場所長会・農研機構食品研究部門・産官学連携委員会共催)
常温流通可能な凍結含浸やわらか食の開発
*重田 有仁
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p. 25-

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抄録

【講演者の紹介】

 重田 有仁(しげた ゆうじん):広島県立総合技術研究所 食品工業技術センター 食品加工研究部 部長

 略歴:1999年 東京農工大学大学院博士前期課程修了,同年広島県立食品工業技術センター採用,2006年 広島大学大学院博士後期課程修了,2024年より現職.

 研究分野:食品加工,微生物制御

 凍結含浸法は,凍結処理と減圧による含浸処理により食材内に軟化酵素等を急速導入する技術で,食材の外観を残しつつも咀嚼困難者が喫食可能な軟らかい食品の製造が可能である.一方,凍結含浸介護食品は,極めて軟らかい故に流通中に型崩れしやすいため,冷凍食品として販売されている.そのため,冷凍に係る製造,輸送,在庫等の各コストや販路の制限,賞味期限が課題となっていた.また,東日本大震災の停電時に介護施設において冷凍食品の保存が不可能となった事例があり,常温保存が可能な商品が求められていた.

 そこで,本研究では,常温での長期保存が可能で輸送耐性があり,防災用備蓄介護食としても利用できるレトルト介護食の製造技術を開発し,商品化に至った.

 凍結含浸技術とレトルト殺菌処理を組み合わせるため,食材ごとに適切な酵素選定,酵素処理条件並びに加熱殺菌した後の最終的な軟化度情報を蓄積し,レトルト加熱を加味した適切な酵素軟化条件を決定した.特に,肉類については加熱により収縮・硬化するため,保水材等の導入によりレトルト後も軟らかさを維持する製法を開発した.

 また,流通中の型崩れを防止するため,容器内の調味液の粘度を高めることで輸送耐性を付与する技術を開発した.併せて,レトルト加熱殺菌における伝熱阻害を低減すること可能で,介護食として適切な粘度(誤嚥防止),食材からの離水防止を両立させる増粘剤の配合・添加条件を決定した.

 流通時の型崩れ防止効果を評価するため,農研機構食品研究部門と共同で輸送時の振動特性評価,輸送シミュレーション,トラック輸送の実証試験を実施し,缶詰容器を用いた試料については輸送時の型崩れが防止可能なことを確認した.筑前煮やカレーなど各種の食材・メニューに対応したレシピ・製法を開発し,特許許諾企業に技術移転を図った.3年間の保存試験を実施したところ,保存後も食材の軟らかさ(5×104 N/m2:歯茎でつぶせる程度)が維持され,型崩れせず,調味液の粘度低下も生じないことが確認できた.

 本技術は特許権利化し,現在6社に特許許諾している.缶詰形状の商品が販売されており,嚥下困難者のQOL向上の寄与に加え,防災備蓄食としても活用されている.

 凍結含浸技術は現在も技術開発を継続しており,増粘剤の存在下で酵素や調味料を減圧含浸処理するレトルトパウチ詰め向けの簡易製造法,高温の食材を用いることで含浸効率を高めた高温急速法,減圧処理することなく,食材と含浸溶液の温度差を利用して含浸する常圧含浸法など開発している.また,やわらか食のみならず,一般食の美味しさや栄養強化に向けた技術開発にも取り組んでいるところである.   

※本成果は,農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業を活⽤して得られたものです.

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