2012 年 48 巻 9 号 p. 314-321
本研究では静的引張り荷重を受ける中実円柱段付き重ね合せ継手内の応力分布解析と強度を検討している金被着材(同質S45C)と接着剤の縦弾性係数比,接着層の厚み,スカーフ角およびステップ段数などが接着界面の応力分布に与える影響について軸対称有限要素法(ANSYS)を用いて解析した。本継手では外周部に発生する特異応力により,外周部の接着剤と被接着体の界面から破断が始まる。このため強度に関しては外周部に発生する最大主応力の特異応力を下げることが有効であることがわかっている。本研究では円形断面の場合について板状継手と同様の考察を行った。その結果,被着材と接着剤の縦弾性係数比が大きくなるほど(接着剤の縦弾性係数が被着材のそれに近づくほど),接着層の厚みが小さいほど,ステップ段数が多いほど,そしてスカーフ角が大きいほど外周近傍の特異応力が低下することがFEM解析より明らかにされた。また,これらFEMの解析結果と,継手の応力一ひずみ実験の測定結果および破断テストの結果とはよく一致した。すなわち,中実円柱段付き重ね合わせ継手に関しては板状の継手と同様な傾向があることが解明された。