2023 年 59 巻 10 号 p. 329-341
側鎖に不飽和基を含むマレイミド共重合と多官能チオール架橋剤のチオール・エン反応により,優れた耐熱性を持つ熱硬化物が生成する。本研究では,N-ブチルマレイミドとメタクリル酸アリルならびにメタクリル酸ビニルのラジカル共重合により,側鎖に不飽和基を含むマレイミド共重合体を合成した。また,N-フェニルマレイミドあるいはN-ブチルマレイミドとアクリル酸メチルの共重合体の側鎖メチルエステルの一部をポリマー反応によってアリル基に変換した。これら側鎖に不飽和基をもつマレイミド共重合体を,メルカプト基で修飾したシルセスキオキサン (SQ) ならびにイソシアヌル酸トリアリル (TAIC) 存在下で加熱し,熱硬化物を作製した。ビニル基およびアリル基とメルカプト基の反応の進行をIR スペクトルで追跡し,マレイミド共重合体の繰り返し構造の影響を明らかにした。また,これら前駆体ポリマーとその熱硬化物に対して熱重量分析法を用いて熱分解開始温度ならびに残渣重量を決定し,熱安定性の評価を行った。さらに,熱硬化物の透過率測定,引張試験ならびに粘弾性測定の結果に基づいて,光学ならびに機械特性に及ぼす繰り返し構造や架橋構造の影響を明らかにした。N-ブチルマレイミドとアクリル酸エステルの共重合体のチオール・エン反応によって得られる熱硬化物が最も優れた熱安定性,透明性および機械特性を合わせ持つことがわかった。