抄録
<要旨>文化資源がいかに産業的に運用可能なカタチへ変換できるのか、広井王子氏の創作実践を手がかりに検討する。ここでいう文化資源とは、伝統文化に限られず、地域、家族史、食、街の記憶、歌、劇場、近代史、異文化表象、媒体記憶など、作品化以前に存在する経験の束を指す。広井氏の仕事は、これらをゲーム、舞台、声優、歌、紙面、ファン参加へドッキングさせ、複数媒体に展開可能な産業的造形へ変換してきた点に特徴がある。とりわけ『サクラ大戦』におけるキャラクター・李紅蘭の造形は、李香蘭に象徴される昭和歌謡・映画記憶、広井家の満洲・中国・向島に関わる家族史、日中国交正常化後の帰国経験を背景としながら、悲劇的な歴史をそのまま再現するのではなく、受容可能で反復可能なキャラクター属性へ加工した事例として読むことができる。以下では、文化資源の採集、媒体制約の読解、造形のコア部品としてのキャラクター設計、声・歌・舞台による身体化、紙面・イベント・受容共同体による長寿化(ロングセラー)という工程(プロセス)に分解し、複合型人材の育成の再現性を考察したい。