アジア民族造形学会誌
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最新号
アイデンティティをめぐる制度と象徴 ― パキスタンにおけるハワージャ・サラーの命名とその帰結
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • パキスタンにおけるハワージャ・サラーの命名とその帰結
    劉 高力
    2025 年21 巻01 号 p. 3-14
    発行日: 2025/08/23
    公開日: 2025/12/25
    ジャーナル オープンアクセス
    <要旨> 本稿は、パキスタンにおいて法的に認定された「第三の性」「ハワージャ・サラー( Khawaja Sara )」が、いかにして制度的命名と宗教的・文化的象徴の交差点において再構築され、定着してきたのかを明らかにするものである。筆者は2011年以降、パキスタン各地で長期的なフィールドワークを行い、ハワージャ・サラーと呼ばれる人々の生活、宗教実践、法的アイデンティティ形成の過程を参与観察とインタビューを通じて記録した。分析は宗教的象徴、歴史的語彙、法制度の三つの視点から構成され、特に2009年以降の最高裁判決による「ハワージャ・サラー」という名称の導入とその正統化のプロセスに焦点を当てた。本稿は、ハワージャ・サラーというジェンダー名が単なる呼称ではなく、翻訳、包摂、管理という政治的力学の中で構築された制度的構成物であることを示すとともに、ジェンダーの植民地性、身体性、自己命名の可能性についての理論的考察を行う。
  • ~ヒンドゥー教「水源の神々の森」復興に関する考察~
    滑志田 隆
    2025 年21 巻01 号 p. 15-24
    発行日: 2025/08/23
    公開日: 2025/12/25
    ジャーナル オープンアクセス
    <要旨> 世界8位の森林大国インドネシアは長年にわたる無秩序な開発、違法な伐採、農地への転用、山火事の頻発等により森林環境資源が危機的な様相を深めており、持続可能な森林経営・管理への道筋の確立が急務である。本稿は視察対象としてバリ島山間部のプダワ村を選び、住民の自治組織が森林管理への潜在的意欲を活性化していることに注目した。そのうえで、伐採地での再植林、ヒンドゥーの神々が棲む水源林の保護、山火事防止などを推進する実践活動の模様を報告し、それがインドネシアの森林行政に新たな展望を開く可能性があることを指摘する。また、大学教育における社会教育プログラムとの結合が、山岳少数民族Aga の地域伝統文化を再興し、地域森林生態系の破壊進行を防止する効果をもたらす過程を考察する。
  • 青山 英明
    2025 年21 巻01 号 p. 25-33
    発行日: 2025/08/23
    公開日: 2025/12/25
    ジャーナル オープンアクセス
    <要旨> 新たに発見した文政の頃の水戸藩に伝わる古武道流派である為我流、浅山一伝流の代表的な継承者である藤咲冨之丞可道の家伝の古文書と、昭和18年に旧水戸藩士の武石兼相が弟子の松本貢に宛て無比流、浅山一伝流、兼相流伝書の形式と中身の比較を中心に、武道の伝承の特質上、ご親族や弟子筋のオーラルヒストリーなどの補足情報を交えながら、江戸後期から昭和初期にかけて、武士階級に伝わる武道の変遷と武道家たちの精神性の考証を試みた。
  • -意識と意図の自由
    松木 貴子
    2025 年21 巻01 号 p. 34-44
    発行日: 2025/08/23
    公開日: 2025/12/25
    ジャーナル オープンアクセス
    <研究ノート> 本研究ノートは、江戸時代後期の禅僧・良寛の「賦」に込められた「慈愛の響き」と現代的意義を考察する。良寛の慈愛は、彼が生涯信奉した『法華経』精神と、その教えを漢文で凝縮した独自の「法華讃」に根差す。漢文における高度な思想表現に適した[ 賦] は、「閑居賦」等で自然への慈愛と万物平等思想を詳述。「無欲」の漢詩は、清貧な生き様が慈愛の基盤を示す。和歌では「毬つき」「カタクリ」「散る桜」を通し、日常の無常観や純粋な意識を表現した。良寛の詩歌は、「無我の意識とあるがままの受容」を基盤とし、「普遍的慈悲の実践と内なる真理への忠実さ」を意図する精神活動の結晶である。これは、「意識と意図の自由」として、読者に世俗的執着からの解放と内面幸福を訴える。特に、「天上大風」の逸話は、その自由な精神の究極の体現であり、現代社会が抱える心の閉塞感に対し、普遍的癒しと解放の可能性を提示している。良寛の精神は、今もなお深い示唆を与え続ける。
  • 髙橋 智一
    2025 年21 巻01 号 p. 45-53
    発行日: 2025/08/23
    公開日: 2025/12/25
    ジャーナル オープンアクセス
    <研究ノート> 千葉県いすみ山田大門区に所在する大日堂には、菩薩形像の頭部である鉄造仏頭(以下、大日堂仏頭、写真1~3)が伝わる。総高113.0cm を誇る大作ながら、天冠台から上の部分と三道から下の体部が伝わらず、史料にも恵まれないために、その詳しい制作背景などはほとんど明らかになっていない。発見から半世紀以上たった今、あらためて作風や構造、鋳造技法を確認し、大日堂仏頭の作者や、特色について若干の考察を述べてみたい。
  • 水野 通雄
    2025 年21 巻01 号 p. 54-57
    発行日: 2025/08/23
    公開日: 2025/12/25
    ジャーナル オープンアクセス
    <研究ノート> 私はアンコールの主要な遺跡を年代順に整理し、それに残されているいくつかの謎や未解明の点を書き留めた。また、「水の帝国」でもあったクメール王朝が残されて遺跡についても考察した。クメール帝国の時代には、この地域では一年に三~四回の作物生産が可能であったが、現在では雨季に一度しか収穫できないように見える。過去における高い生産性の一例として、アンコールは現代社会にとって重要な示唆を与えている。
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