日本地理学会発表要旨集
2003年度日本地理学会秋季学術大会
会議情報

自治体内部におけるサービスの空間的公正性に関する検討
*畠山 輝雄
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 165

詳細
抄録
1.はじめに 近年、わが国では高齢化が進展しており、それに伴い介護サービスのニーズも高まっている。このニーズの高まりから、全国でサービス供給量の増大が図られている。これは、各自治体の老人保健福祉計画の供給目標に準じているものであるが、高齢者福祉施設を新設することや、施設を新設しなくても、定員を増加させるなど、サービス供給量の増加を試みている。しかし、これらの各自治体の政策や財政などの差異により、サービス供給量に地域格差が生じている。これらのサービス供給の地域格差に関して、地理学では1960年代から研究が蓄積されてきた。欧米においては「地域的公正」、「領域的公正」(territorial justice)という観点でピンチ、デービスらにより議論されてきた。日本でも、杉浦(1997)において、広島県の高齢者福祉サービスの地域的公正について論じている。地域(領域)的公正の概念は、2つの解釈がある。第1に、競合する集団間の領域の配分に関するもので、境界論争や政治移民分析において考察されてきた。第2に、ある何らかの基準に従い、政治区域ないし行政域間に資源を公正に配分することである(ピンチ,神谷1990)。近年では2番目の解釈をすることが多く、福祉サービスなどの地域的公正が主に議論されている。一般的にこのような概念から、福祉サービスの自治体間格差に関する議論が多くを占めるが、デイサービスやデイケア、ホームヘルプなど、そのサービスの性格上、サービス供給空間が狭域であるサービスにおいては、自治体内部においてもサービス供給の地域格差が生じている。地理学において、これらの格差を明らかにし、この空間的公正性を検討することは、自治体内部で平均的かつ効率的な福祉サービス供給を行う上で重要である。そこで本発表では、デイサービスを事例に、自治体内部における福祉サービス供給の地域格差を明らかにし、自治体内部におけるサービスの空間的公正について検討する。なお、地域(領域)的公正は、自治体間の分析において多く用いられているが、本発表ではさらにミクロなスケールで分析を行うことから、空間的公正とする。2.デイサービスの概要 デイサービスを行うデイサービスセンターは、一般的に9時から17時までの8時間の間に、介護や入浴、昼食、レクリエーションなどのサービスを受ける施設である。この時間の内、朝夕1時間ずつを使用し、自宅と施設の間を施設の車によって送迎を行い、また1度の送迎に4_から_5人の利用者を乗車させるという理由から、施設より遠方の居住者は利用できない。このことからデイサービスセンターのサービス供給空間は狭域であり、自治体内部において、施設の立地や利用者宅の地理的条件などによって利用(供給)格差が生じている。3.空間的公正に関する検討 自治体内部においてサービスの空間的公正に関する検討を行った結果、デイサービスセンターのサービス供給空間が狭域であるという性格から、施設立地の状況により、サービスが供給しづらい地域が存在した。また、デイサービスのニーズと実際のサービス供給との差が生じている地域も存在した。このような格差を生じさせないためには、各サービスのニーズの把握、そしてそのニーズに合わせた施設の適正配置が重要である。文献杉浦真一郎 1997.広島県における高齢者福祉サービスと地域的公正.地理学評論 70:418_-_432.S.ピンチ著,神谷浩夫訳 1990.『都市問題と公共サービス』43_-_89.古今書院.ポール・ノックス著,小長谷一之訳 1995.『都市社会地理学(下)』192_-_216.地人書房.
著者関連情報
© 2003 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top