日本地理学会発表要旨集
2005年度日本地理学会秋季学術大会
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地すべり地形分布図集成図「長岡・高田・長野地域」の作成
清水 文健井口 隆*内山 庄一郎大八木 規夫宮城 豊彦
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p. 67

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抄録

1.はじめに 防災科学技術研究所では、1982年より5万分の1の精度で地すべり地形分布図を判読・刊行してきた。これまでに東北・関東・中部地方の刊行をほぼ終え、現在近畿から中国地方にかけて作成中である。これまで刊行を終えた範囲では広域での地すべり地形の分布状況の詳細が明らかにされた。その結果、予想以上に多数の地すべり地形が存在していることが明らかとなり、斜面地形の形成に関して地すべり変動が大きな役割を果たしていることが明らかにされた。分布状況が特徴的な長岡から長野にかけての地域の地すべり地形集成図を作成したので紹介する. 2.地すべり地形分布図集成図の作成方法地すべり地形分布図は空中写真判読した結果を所定の凡例を用いて地形図に移写し、それの製図によって刊行を行なってきた。最近はインターネット公開を進めるため分布図のデジタル化を進めており、デジタル図との重ね合わせが容易になった。いろいろな試行の結果、10mメッシュDEMから作成した陰影図とラスター地形図を合成した地図画像上にベクトルデータから作成した地すべり画像を重ねて作成している。オリジナル図面は5万分の1で作成したが、幅2m、高さ3mと大きすぎるため、10万分の1に縮小した図面を展示する.3.地すべり地形集成図「長岡・高田・長野」について今回作成した集成図は、20万地勢図の高田図幅を中心に、長野図幅の北半部と長岡図幅の南半部を含めた5万分の1地形図32面分の範囲である.範囲には新潟県の西部、長野県の北東部と群馬県の西部が含まれている。また昨年発生した中越地震の震源域も含まれている.作成した地域内を南北に犀川_-_信濃川が流下し地形・地質的にも多様な様相を呈している。またこの地域は世界でも有数の豪雪地帯であり、地質構成とも相まって地すべりの多発地帯となっている。特に北半部の東頚城・西頚城・魚沼にかけての丘陵では幅100_から_200mの規模の地すべり地形が多数密集しており、地すべり地形でないところを探すのが困難なほどである.地すべり相互の関係も複雑である。一方この地域は妙高・黒姫や苗場山、浅間・榛名山など多くの火山も分布する地域である。火山周辺では基盤の地質との相互作用などから様々な形態の地すべり地形が確認できる。地すべりの分布やその規模は地質・地質構造・地形などに大きく依存していることが図から明瞭に読み取ることができる。作成した図面の範囲内において4万箇所を超える地すべり地形の存在を確認することができた. 過去この地域では新潟県中越地震の地すべり変動をはじめ名立崩れや高場山地すべりなどの数多くの土砂災害を経験している。この地すべり地形分布図が地すべり災害の防止や、地域の防災計画等だけでなく様々な地形・地質に関する研究データとして有効に活用されることを望みたい。

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