日本地理学会発表要旨集
2007年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 407
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考古遺跡産出試料の14C年代値(δ13C補正済)と考古編年の検討
*木庭 元晴影山 陽子白澤 武蔵前野 真慶佐藤 ふみ米田 文孝
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抄録

 考古遺跡では同層準に考古遺物と放射年代試料が含まれることが多々ある。その考古編年と放射年代がどうにも一致しないという体験をお持ちの方も少なからず居られるに違いない。この理由を長年検討しようと思いつつ,これまで実施しなかった。本発表では,大阪府,兵庫県,奈良県のいくつかの考古遺跡で得た年代試料について,堆積学と放射年代学の観点から,論じたいと思う。
 当研究室では,放射性炭素年代をベンゼン-液体シンチレーション法で求めている。標準試料は合衆国のNISTII(シュウ酸)で,液体シンチレーション計測のたびに,NIST2を作成している。これは他の試料と違って測定に労力がかかり,一つが3万円相当であることもあり,液体シンチレーション計測するには,試料ベンゼンを10個以上用意した後に,NISTIIとともに実施することになる。作製後の揮発を防ぐため,冷凍庫に保存している。気になるのが,標準試料NIST2や試料から作成した標準ベンゼンの同位体組成の安定性,つまりIベンゼンの冷凍・自然解凍プロセスでの炭素同位体の分別の危険性である。
 世界の幾つかのラボではNISTの代わりに,高濃度の放射性炭素溶液から作成したNISTIIほどの放射性炭素を含むベンゼンが使われている。ベンゼン合成過程での試料とNISTIIの条件の統一を考慮すると,本研究室の手法が適切であるが,いつも同じ濃度を再現することができないのではないかという危惧を持っている。高濃度の放射性炭素溶液から作成したII標準試料ベンゼンの濃度の再現性を検討する。
 シンチレータとして最も優れているのはbutyl-PBDとされる。採取した試料からベンゼンを作成するのであるが,もともとの試料が少ない場合または収率が悪い場合があり,均一の試料ベンゼン容量が用意できない場合がある。そういう場合に,これまでは他の研究機関同様,試料ベンゼンへの100%溶解の範囲で,butyl-PBDの濃度を一定にして液シン計測を実施してきた。しかしながら,同一の試料ベンゼンであっても容量が少ないと若くなる傾向がある。液体シンチレータについては容量依存性を凌駕する方法をKoba(2000)は求めているが,このIII粉末シンチレータについても容量依存性を凌駕する必要がある。
 以上,下線を施したI~IIIの課題をクリアした上で,考古遺物編年と放射年代の関係を示したい。放射年代試料には,古土壌(炭化試料),炭,木片,そして炭酸塩からなる軟体動物殻がある。対象遺跡は,大阪府で10カ所余り,兵庫県で2カ所,奈良県で1カ所である。
 なお,年代試料の前処理前,前処理後,合成されたベンゼンなどの安定炭素同位体比の計測は,燃焼法(GV Instruments社製IsoPrime 関西大学なにわ・大阪文化遺産学研究センター)によって実施する。
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© 2007 公益社団法人 日本地理学会
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