日本地理学会発表要旨集
2007年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 411
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東シベリアにおける近年の永久凍土活動層内の地温変動と湿潤化
*飯島 慈裕矢吹 裕伯大畑 哲夫
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抄録

I.はじめに
 日本では2006年/2007年の冬季は記録的な暖冬であった。寒気の極であるシベリアでも、同時期の暖冬が顕著に現れ、例えばレナ川中流域のヤクーツクでは、12~2月の平均気温が、過去30年間の平均値に比べて15℃?も高かった。加えて、ヤクーツク近郊のレナ川に注ぐ支流では、本来完全凍結しているはずの12月に流出が生じるなど、特異ともいえる現象も現れた。これらの現象は、永久凍土の活動層厚の増加とともに、土壌の湿潤化が生じている実例を示していると考えられ、特に2004年以降、その傾向が現れている。
 本研究では、東シベリアのレナ川流域と中流部(ヤクーツク)での地球環境観測研究センターによる観測データならびに長期気象観測データセットを用いて、過去30年の変動から近年の永久凍土活動層内の地温・土壌水分量変化の傾向を考察した。

II.研究地域と使用したデータ
 本研究では、東シベリア77地点の日別値の地上気象観測データセット(Baseline Meteorological Data in Siberia Version 4: BMDS4)を用いた。編集期間は1985年~2004年の20年間である。また、2005年~2007年6月の期間はNCDCのGlobal Summary of Dayによって、日別値を追加した。さらに、地表面・土壌の水文・気候環境の詳細な観測が1998年以降、レナ川中流域のヤクーツク・スパスカヤパッドのカラマツ林において実施されており、1998年~2007年の観測データを利用した。また、永久凍土研究所で観測を委託しているヤクーツク周辺での地温、土壌水分のデータも用いた。

III.結果
 ヤクーツク・スパスカヤパッドのカラマツ林内の地温変化から、2004年以降、1.2m深までの冬季の地温が年々上昇していることが明らかとなった。冬季の地温の上昇と対応して、積雪開始時期が早まると同時に、年最大積雪深が50cmに達し、冬季前半の冷却が抑えられると共に、前年秋までに発達した活動層内の土壌水分量が高く保たれ、冬季の地温低下が抑えられていることが明らかとなった。過去30年間の気候データから、こうした湿潤化と地温上昇は、近年顕著に現れ始めた現象であると考えられる。
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© 2007 公益社団法人 日本地理学会
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