日本地理学会発表要旨集
2011年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 504
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生ごみ分別リサイクルに対する地域住民の意識
富山市の試行事業を事例に
*栗島 英明
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抄録
家庭から排出される生ごみは年間1,000万トン以上であり、一般廃棄物の約30~40%を占めている。廃棄物処理の面では、生ごみの分別リサイクルは、処理量の削減や効率的なエネルギー回収が期待される。また、生ごみは近年注目されるバイオマス資源であり、その利活用が期待されている。
本研究では、富山市における試行事業を事例に、生ごみ分別リサイクルに対する住民意識について、住民アンケート調査を用いて分析した。その際、分別実施地区と未実施地区とを比較し、住民意識の差異についても検討した。
アンケート調査では、「生ごみ分別の行動意図」「行動理由」のほか、生ごみ分別に関わる様々な質問を行った。また、コンジョイント分析を用いた生ごみ分別リサイクルの効用推定のために、選択型実験も実施した。2010年1月にweb調査を実施し、回収数は分別実施地区が79、未実施地区が228であった。 得られた調査結果を用いて、分別実施地区と未実施地区とで回答結果を比較するとともに、コンジョイント分析を用いて分別リサイクルに対する支払意思額(WTP)を推定した。
コンジョイント分析の結果は以下のとおりである。 (1)  リサイクルなしの効用を0とした場合に分別の効用はすべてプラスとなった。これはリサイクルの便益が、負担を上回っていると解釈できる。 (2)  「袋分別」から「行政が分別」のWTPを引いた結果がプラスとなった。袋分別の負担を自らが分別することによる便益が上回るという結果となった。また、未実施地区よりも実施地区のほうがWTPが大きいことから、分別を経験したことでより価値を感じていることが示唆された。(3)  一般的にサービス水準が高いとされる「戸別収集」の効用が、「集積所収集」の効用を0とした場合にマイナスとなった。プライバシーに対する懸念が理由の1つと推察できた。
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