日本地理学会発表要旨集
2011年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 501
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名古屋市における介護サービス業に従事する女性の仕事と生活
*加茂 浩靖
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抄録
本研究の目的は、大都市圏の老人介護サービス業における女性従業者の増加要因を介護サービス産業側と従業者側の両面から検討することである。このため名古屋市を事例として、従業者を確保するために介護事業所がどのような工夫をしているのか、また、仕事と家事の両立をいかに図りながら女性が就業しているのかを、実態調査の結果をもとに検討した。研究資料を得るため、本研究では名古屋市瑞穂区および南区に立地する介護サービス事業所での聞き取り調査、営利法人の女性従業者に対するアンケート調査を実施した。聞き取り調査では38事業所から、またアンケート調査では145人から回答を得た。<BR>介護サービス業における労働力需要の増大にともない、全国の動向と同様に、この地域でも女性の就業者が急増した。事業所・企業統計調査によると、2001~2006年の期間に、社会保険・社会福祉・介護事業の事業所が803から1,618へと増加し、その女性従業者が12,786人から27,057人へと14,271人も増加した。介護事業所での聞き取り調査では、女性の雇用対策として、他の事業所より高い賃金を支給している点、勤務時間の選択ができる点、電動アシスト付き自転車や駐車場を確保し通勤に配慮している点が認められた。他方、女性従業者の回答によると、働く理由として「家計補助」、また「経験や資格をいかせること」、「仕事内容に魅力を感じて」をあげる者が多く、家事や自身の適性を重視しながら就業する者が多いことを示唆している。家庭内役割分業については、「夫が全く家事をしない」と回答する者が約4割を占めており、女性従業者自身が家事の主たる担い手として家事を負担しつつ、介護サービスの仕事に従事していることが判明した。家事の合間に家計補助として働きたい、あるいは資格や経験を生かしたいと考える女性の存在と、介護サービス事業所の雇用面での工夫がマッチして、雇用機会が多様な大都市圏でもこの産業における女性従業者が増加してきたと考えられる。
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