日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 608
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発表要旨
解析雨量と分散型タンクモデルを用いた常呂川流域の日単位流出モデル
*沼尻 治樹
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抄録

 レーダーによる雨量計測の時間的空間的精度が向上したことにより,グリッドデータによる流域水収支解析が可能となった。そこで本研究では,レーダーエコーと地上観測降水量による解析雨量(気象庁)を入力値とした日単位流域流出モデルの構築を試みた。
 研究対象流域は,北海道常呂川流域である。この常呂川上流部に存在する鹿ノ子ダム流域(流域面積:124k㎡)にてモデルの構築を行った。
 流出モデルの入力値として気象庁の解析雨量(2007年)を使用した。解析雨量の空間解像度は1kmであり,時間雨量が30分毎に記録されていることから,正時のデータを日単位で集計し日雨量分布データを作成した。また,可能蒸発散量の算出に,境野アメダス観測所の日平均気温と稚内の高層気象データ,1km解像度のDEM(国土地理院)を用いた。対象流域内の各グリッドの日平均気温を得るため,対象流域至近のアメダス観測所(境野)の日平均気温を基に,稚内の高層気象データから算出した気温減率を用いてメッシュ毎の気温推定を行った。流域の抽出には,250m解像度のDEM(国土地理院)を用いた。流出モデルの最適パラメータ値探索用に必要な実測流域流出量(=ダム流入量)は国土交通省の水文水質データベースから鹿ノ子ダムのデータをダウンロードして使用した。
 タンクモデルを各グリッドに分散配置し,グリッド毎に計算される流出量を流域で集計するという分散型流出モデルを構築した。タンクモデルは単槽式とし、流出量は,表面流出,中間流出,基底流出の合計である。最適パラメータ値は,解析期間の流域モデル流出量と,鹿ノ子ダムへの流入量の差の2乗が最小値となるように、多重ループ法で探索した。
 このモデルによって、この流域の流出を精度良くシミュレーションできた。また,解析雨量が流域水収支解析の入力値として有効であり、さらに、このモデルを似たような地域特性の流域にも適応できるという見通しが得られた。

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