日本地理学会発表要旨集
2016年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 514
会議情報

要旨
福岡市に立地する介護福祉士養成学校入学者の出身地域
*佐藤 彩子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

本稿の目的は、福岡市に立地する介護福祉士養成学校(以下、養成学校)を対象に、学生の出身地がどの範囲に広がっているのかを解明することにある。この解明は、養成学校が学生募集の効果的な進め方をしているか否かを検討する上で重要である。
養成学校による学生募集範囲を検討する意義は次の点にある。近年、高齢化の進展と家族介護の困難性を背景として、介護サービス需要が高まっている。この実態を受けて2000年前後には養成学校が急増したが、2005年以降は定員割れが著しく2010年の入学定員に占める卒業者数の比率は50.2%である(日本介護福祉士養成施設協会、2012)。他方で、報告者は2014年12月~2015年2月に福岡県内の介護サービス事業所で就業する卒業者と養成学校を経由せずに直接、就職した者(以下、直接就職者)を対象にアンケート調査を行い、卒業者は直接就職者と比べて、3年以上の長期勤続者比率、2資格以上保有者比率が高いことを解明した。この点を踏まえると、卒業者は勤続年数、保有資格数といった質の点で、現在深刻な課題となっている介護サービス労働力不足解消に貢献できる。したがって、養成学校の卒業者数の減少は介護サービス産業へ供給可能な専門職の減少を意味する点で深刻である。
なお、中心性の高い都市ほど地理的に幅広い地域から人を惹きつけることができるとするならば、地方中枢都市である福岡市は県内だけでなく九州全域からも人を惹きつけ、九州他県出身者で福岡市内の養成学校で学ぶ学生も一定数存在すると考えられる。この点で、福岡市の養成学校が九州全域の高校に対して学生募集を行うことはより多くの学生を集めることに繋がると予想される。

著者関連情報
© 2016 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top