日本補綴歯科学会誌
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原著論文
咬合指示の違いが咬合力および咬合接触面積に及ぼす影響
馬場 一英津田 尚吾島 義人渡辺 崇文大楠 弘通宮嶋 隆一郎槙原 絵理鱒見 進一
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2018 年 10 巻 4 号 p. 327-334

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抄録

目的:日常臨床において,術者が患者に咬合を指示する際の言葉の違いにより患者の受け取り方が異なるため,術者の望む咬合状態を再現できない場合が見受けられる.本研究の目的は,3通りの咬合指示による咬合力および咬合接触面積を比較検討することにある.

方法:顎運動機能に問題のない正常有歯顎者の被験者30名に対して,「お口を閉じて下さい」,「噛んで下さい」および「しっかり噛んで下さい」の3通りの言葉で咬合を指示した後,咬合力および咬合接触面積を測定し,比較検討した.

結果:1. 咬合力は,「お口を閉じて下さい」,「噛んで下さい」,「しっかり噛んで下さい」の順に有意に増加し,「お口を閉じて下さい」と指示したときの咬合力を1とすると「噛んで下さい」では約2倍,「しっかり噛んで下さい」では約4 〜5倍であった.2. すべての咬合指示において男性の方が女性よりも咬合力が有意に大であった.3. 咬合接触面積は,「お口を閉じて下さい」,「噛んで下さい」,「しっかり噛んで下さい」の順に有意に増加し,「お口を閉じて下さい」と指示した際の咬合接触面積を1とすると,「噛んで下さい」では約2倍,「しっかり噛んで下さい」では約3倍であった.4. すべての咬合指示において対象者間のバラツキが大きかった.

結論:術者が発する咬合指示の言葉のニュアンスは理解できているものの,果たしてどのくらいの咬合力で噛めばよいのかという解釈は,対象者により異なることがわかった.

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© 2018 公益社団法人日本補綴歯科学会
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