2021 年 13 巻 4 号 p. 357-360
症例の概要:患者は76歳女性.上顎残存歯の疼痛と歯肉腫脹を主訴に来院した.義歯不適合と顎間関係の不良を認め,暫間義歯による義歯床下粘膜の改善と顎間関係の改善を図った後,最終義歯を製作した.
考察:顎堤吸収が著しく,機能運動が困難な本症例に, ティッシュコンディショナーを用いた閉口機能印象を行うことで,咬合圧や口腔周囲組織の機能運動を反映した印象採得ができ,維持安定を図る義歯床辺縁形態と研磨面形態を最終義歯に付与することができた.
結論:全部床義歯製作において,通法による印象採得が困難な顎堤条件や機能的条件の症例に対し,ティッシュコンディショナーを用いた閉口機能印象の有用性が示唆された.