目的:誤嚥性肺炎の予防には残存歯のケアのみならず義歯の清掃についても重要性が高い.介護状態になると今後は義歯の管理は所有者本人ではなくケアに対する知識の少ない老人ホームや特別養護老人ホームなどの介護施設職員が関わっていく必要がある.本研究は今後の義歯ケアの普及と口腔衛生水準の向上ための一助として,介護施設職員にアンケートによる意識調査を行い検討した.
方法:岐阜県と長野県にある特別養護老人ホーム4施設とグループホーム1 施設の職員全員に無記名にて義歯に対する知識についてアンケートを行った.332名を対象とし,回答は単一回答形式で行った.
結果:332名のうち290名の回答が得られ,回答率は87.3%であった.勤続年数は5年未満が56.9%と最も多かった.施設内で義歯に触れる職員は全体の84.5%であり,勉強会などで義歯ケアについて教わったことがあるのは53.1%であった.口腔ケアと誤嚥性肺炎との関係を知っている人は93.7% に達したが,義歯ケアの雑誌や本を読んでいる人は28.6%であった.
結論:介護施設職員332名の義歯に対する知識についてアンケートを行い,以下の結論を示唆した.要介護施設の職員においては義歯ケア,口腔ケアの知識は必要不可欠である.誤嚥性肺炎と口腔ケアの関連は周知されている.施設毎に画一的に口腔ケア,義歯ケアが行えるような基準やマニュアルを作成するべきである.介護施設職員に向けたセミナーや勉強会を敢行し,知識を普及する必要がある.
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