2021 年 13 巻 4 号 p. 365-368
症例の概要:患者は,初診時81歳の女性で,下顎全部床義歯の動揺および咀嚼困難を主訴に来院した.患者の現義歯の状態と,触診や視診による唇頰側粘膜,舌の可動域等を精査し,下顎全部床義歯の床縁位置不良による維持・安定不良を原因とする咀嚼障害と診断した.閉口機能印象を行い,上下顎全部床義歯を製作した.
考察:十分な検査と義歯の床縁の設定位置や形態に配慮して閉口機能印象を行ったことで,機能時の適切な床縁の位置や辺縁形態だけでなく適切な研磨面形態も印象することができたため,良好な結果につながったと考えられる.
結論:義歯の外形ならびに床縁形態に考慮し,印象採得の方法を工夫したことで,主訴の改善と良好な経過を得ることができた.