症例の概要:65歳の女性.上顎右側の歯肉癌に対する上顎部分切除術予定となり,術後の顎義歯製作を目的に当科初診となった.術後,上顎洞との交通を伴う片側性の顎欠損による咀嚼障害および審美障害が認められた.治療用顎義歯にて粘膜の変化に追従した塞栓子の調整を行い,ろう孔が閉鎖後に最終顎義歯を装着した.
考察:顎堤の頰側に位置する上顎洞との交通部は,顎義歯の沈下や動揺に対応し,閉鎖する可能性を考慮した調整を行うことが重要であると考えられた.
結論:口腔外科との連携により,術直後の閉鎖床,早期の治療用顎義歯,最終顎義歯による歯科的リハビリテーションが可能となり,審美,咀嚼能力と口腔関連QOLの改善に寄与した.