2023 年 15 巻 1 号 p. 121-124
症例の概要:患者は82歳の男性で,主訴は下顎全部床義歯の動揺による咀嚼困難であった.開口時と咀嚼時に義歯の動揺が認められ,閉口時に早期接触が生じた.全部床義歯の外形の不良と早期接触による咀嚼障害と診断し,治療用義歯を使用してダイナミック印象を行い,上下顎全部床義歯を製作した.
考察:本症例では,治療用義歯を製作し,大幅な咬合の調整や日常生活における機能時の粘膜動態を採得し,適切な床縁の位置や咬合関係を決定できたため,良好な経過が得られたと考えられる.
結論:旧義歯の問題点を修正した治療用義歯を用いて全部床義歯を製作することで,機能時に義歯が安定し,最終的に患者の満足ならびに咀嚼機能の回復を達成した.