2023 年 15 巻 3 号 p. 345-348
症例の概要:患者は74歳の男性.前歯の被せ物がとれて,見た目が悪く,発音しにくい,食事が摂りにくいことを主訴に来院した.上顎左側中切歯に歯肉縁下に及ぶ重度歯質欠損を認めた.補綴前処置として歯冠長延長術をした後に歯冠補綴を行った.
考察:歯冠歯根比に考慮しながらフェルール効果の獲得と生物学的幅径の改善を目的として歯冠長延長術を行うことで,残存歯質を最大限に活用できたと推測される.
結論:重度歯質欠損を認める上顎前歯部失活歯に対し,フェルール効果を発揮させて残存歯質を力学的に最大限に活用した歯冠補綴を行うことにより,審美障害の改善と顎口腔機能の維持安定を達成することができた.