2023 年 15 巻 3 号 p. 369-372
症例の概要:患者は85歳男性.咬耗による前歯部審美不良と咀嚼困難を主訴として来院した.顕著な咬耗と咬合支持喪失に伴う補綴空隙の減少,義歯の不適合が認められた.使用中の上下顎義歯,プロビジョナルレストレーション,暫間義歯を用いて咬合挙上を行った.患者の審美的,機能的な充足を確認したのち,最終補綴装置となるコーヌステレスコープ義歯を装着した.
考察:類すれ違い咬合を呈する歯列において,リジッドサポートの確立が咀嚼機能の改善と高い患者満足度に寄与したと考えられる.
結論:コーヌステレスコープ義歯による治療は部分欠損歯列に対して有効な治療戦略の一つであるが,咬合支持を喪失した患者では慎重な経過観察が求められる.