2012 年 4 巻 2 号 p. 148-155
補綴治療における予知性と審美性の両立は,外科術式や補綴の技術革新により,可能かつ容易となった.歯列の連続性を回復し,顎口腔機能へアプローチしたうえで審美性を確立していかなければならない.歯科材料の目覚しい発展によって,外科術式や補綴の選択肢・優位性が向上したことは周知の事実である.特に,CAD/CAMの進歩により,審美修復およびインプラント修復の幅が大きくなった.しかしながら,それらが先行するあまり,本来の患者本位の歯科医療の分野が置き去りにされていないかを本項において再考してみたい.今回は新素材ジルコニアに焦点を絞り,強度や光透過性や組織親和性などその特性を紹介するとともに,ジルコニアフレームの特徴を最大限引き出すための手法,さらにはインプラント(アバットメント)も含めた幅広い臨床応用や留意点について解説する.チェアーサイドとラボの役割分担を明確にし,同じ意識で一人の患者・一つの模型に取り組むことが重要であり,検査・診断・治療計画から,審美性と機能の回復,メインテナビリティの確立のために何が必要かを示していきたい.