抄録
目的:咬合接触再現性の高い歯冠修復物を製作できる歯列模型製作法の探求を目的とした.
方法:被検者は個性正常咬合を有する健常有歯顎者20名とした.通法1として上下顎とも既製トレーとアルジネート印象材,通法2として上顎を個人トレーと付加型シリコーンゴム印象材,下顎を既製トレーとアルジネート印象材,および通法3として上顎を既製トレーとアルジネート印象材,下顎を個人トレーと付加型シリコーンゴム印象材の組み合わせで印象採得を行った.得られた印象体から歯列模型を製作し,模型法にて咬合器に装着した.咬合印象法ではプラスチックトレーと付加型シリコーンゴム印象材にて印象採得を行い,咬合器上に再現した.口腔内ならびに模型上の咬合記録を咬合接触検査材にて採得し,add画像を抽出した.上顎歯列模型の咬合面,咬合記録およびadd画像を十分視察し,中尾の咬合小面の分類に照合して,咬合接触部位を同定した.口腔内と模型上の咬合接触部位の比較から再現部位数と非再現部位数を求めた.印象法間において対応のある一元配置分散分析とTukeyの多重比較検定を行った.
結果:再現部位数,非再現部位数ともに4群間で有意差が認められた.咬合印象法は,再現部位数では通法と比較し多い値を示し,非再現部位数では少ない値を示した.
結論:咬合接触再現性の高い歯列模型の製作には咬合印象法が有用であることが明らかとなった.