日本補綴歯科学会誌
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原著論文
SEVNB法とIF法によるジルコニア(Y-TZP)の破壊靭性評価
原田 光佑新谷 明喜
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2013 年 5 巻 2 号 p. 165-173

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抄録
目的:イットリア系ジルコニア(Y-TZP)の破壊靭性値をSingle Edge V-Notch Beam法(SEVNB法)とIndentation Fracture法(IF法)を用いて測定し,その結果を検討し適切な破壊靭性値測定法を明らかにすることを目的とした.
方法:SEVNB法は,International Organization for Standardization(ISO)6872に準じてVノッチを付与した試験片を用いて,クロスヘッドスピード0.5,1.0 mm/minの2条件で測定し,ISO 6872の計算式で破壊靭性値を算出した.IF法は鏡面研磨した試験片に圧子圧入荷重30 kgf,押込時間15秒でビッカース圧子を圧入して発生させた圧痕とクラックを測定し,日本工業規格(JIS)R1607の計算式で算出した.得られた破壊靭性値は多重比較を行った.SEVNB法の破断面,IF法の圧痕とクラックを走査電子顕微鏡(SEM)で観察し破壊の様相を検討した.SEVNB法の破断面の相変態についてX線回折(XRD)を行った.
結果:SEVNB法とIF法では有意差を認め,SEVNB法は高い値を示し,標準偏差も大きかった.また,SEVNB法において,クロスヘッドスピード0.5 mm/minと1.0 mm/minとでは,1.0 mm/minのほうが有意に高い値を示した.SEM観察により,SEVNB法では安定破壊と不安定破壊を認め,IF法では圧痕とクラックが明瞭に観察された.SEVNB法の破断面には,曲げ応力による相変態がXRDで認められた.
結論:Y-TZPの破壊靭性値測定にはSEVNB法よりもIF法のほうが適した試験法であると示唆された.しかし相変態という特異的性質を有するY-TZPの破壊靭性値測定法には,SEVNB法,IF法ともに新たな実験条件を検討する必要があると考えられた.
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© 2013 社団法人日本補綴歯科学会
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