抄録
症例の概要:55歳女性.左側顎関節部の関節雑音を伴う開口困難を主訴に来院,生活習慣指導とスタビライゼーション型スプリントを用い治療を開始した.顎関節症症状の改善とともに習慣性咬合位における咬合接触の異常が明らかになったため,補綴処置により修正した.その後経過観察中に,顎関節症症状が再発することはなかった.
考察:スプリントにより,顎関節症を改善させ,本症例の顎関節症症状と咬合因子との関連を明らかにし,必要な補綴処置を適切に進めることができた.
結論:顎関節症に対しては可逆的な治療法を選択することが推奨されているが,咬合因子との関連が明らかな場合には,速やかに補綴治療を行う必要があると考えられた.