【目的】岩手県は他の小麦産地同様、小麦の収穫時期が梅雨とかさなるため、しばしば穂発芽等の被害を受けてきた。平成17年も小麦の収穫時期に降雨が続き、パン用小麦ゆきちからも被害を受けた。かろうじて被害の少なかった収穫物についても、アミログラムの最高粘度(MV)が低アミロの目安とされる300BU以下となったものが多かった。一方、製パンにおいてはMVが100BU程度あればパンの比容積はほとんど低下しないという報告がされているが1)、ゆきちからについてはこのような検討はなされていない。雨害にあった小麦も有効に利用していくため、低アミロとなったゆきちからの製パン性について検討を行った。
【方法】試料は平成17年に岩手県内で栽培、工場で製粉されたゆきちからを用いた。小麦粉の品質としてタンパク質含量、灰分、アミログラム最高粘度を測定した。製パン試験は小規模ベーカリーを想定し、縦型ミキサーの他、モルダー、オーブンも業務用の機械を使用し、食パンを製造した。焼成したパンについて、ワンローフの体積、食味官能評価、テンシプレッサー(タケトモ電機 My Boy)による硬さの測定を行い比較検討した。
【結果】雨害を受けたゆきちから粉のMVは約190BUで、低アミロの目安とされる300BUを下回るものであった。これを用いて製造したワンローフは、対照とした健全なゆきちから粉より、タンパク質含量が1%低いにもかかわらず、体積がほほ等しく、食パンのクラムの硬さもほぼ同じとなった。 1)日本食品科学工学会第45回大会講演集p.198