目的:廃鶏の肉は、ブロイラーよりも飼育期間が長いため、結合組織が発達して硬くしまっている。この硬い肉を軟化する方法を見出すために、酢で前処理した肉では、結合組織の構造が変化し、キウイで前処理した肉では、筋線維の構造が崩壊した。このように酢およびキウィで前処理して加熱した肉の組織構造の変化を食品組織学的に調べた。
方法:廃鶏のムネ肉を1cm×1.5cm厚さ0.5cmの大きさに採取した。材料は、食酢およびキウイに5時間漬けて前処理した肉および未処理の肉をそれぞれ15分間および30分間茹でた。加熱後は、10%ホルマリン液で固定し、パラフィンに包埋して薄切した。切片はピクロシリウス(PS)およびAzanで染色した。
結果: 酢に漬けた肉は、筋上膜の膠原線維が部分的に分離し、筋内膜は、一部が消失した。15分間加熱した筋上膜の膠原線維は接合したが、30分間の加熱では、部分的に解離した。筋周膜の膠原線維は、15分間の加熱によって部分的に接合および溶解が生じ、筋内膜の多くは消失して筋線維同士の融合がみられた。この組織構造の変化は、30分間加熱した肉でも同様であった。 キウィに漬けた肉は、筋上膜および筋周膜の膠原線維が分離し、筋線維の一部は崩壊した。15分間および30分間加熱した肉の筋上膜は剥離していた。 筋周膜および筋内膜の一部は溶解した。筋線維は、部分的な崩壊が生じ、筋線維間に可溶性タンパク質が溶出した。未処理の肉の筋上膜の膠原線維は、15分間の加熱では接合していたが、30分間の加熱では部分的な解離が生じた。