抄録
【目的】我々はこれまでに、廃棄物である魚のあら及びうろこの再利用を目的とした“煮こごり”を調製し、水産物コラーゲンの利用と嚥下食への応用を踏まえたゲル状嚥下食品“煮こごり”の調理特性について検討してきた。今回は魚類の未利用部位調製“煮こごり”の抗酸化能に注目し、化学発光法を用いてペルオキシラジカル捕捉能の測定を行った。
【方法】“煮こごり”材料はまこがれい、鰤及び鰤のあら、鯛のあら及びうろこ、鮭の頭を用いた。厚生労働省規定による高齢者用食品のかたさ基準を満たすゲル強度の“煮こごり”を得ることを目的として、各材料を角切りにし、材料に対して適量の水を加え、蒸発水分を補いながら一定時間加熱し、ろ過して試料を調製した(対照試料)。さらに日本の伝統的な調味料である醤油で調味(10%)した試料も調製し(醤油添加試料)、それらのペルオキシラジカル捕捉能の測定を行った。抗酸化能の評価には、発生した上記ラジカルの半分量を除去する試料濃度を示すIC50値を用いた。
【結果】いずれの対照試料も高いペルオキシラジカル捕捉能があることが明らかとなった。コラーゲンそのものは活性酸素を防御すると言われているが、今回の実験結果からも、“煮こごり”由来のコラーゲンはペルオキシラジカル捕捉能に大きく寄与していることが推測された。また、発酵調味料である醤油には高い抗酸化能があることが報告されているが、魚類の未利用部位から調製した“煮こごり”においても醤油を添加するとペルオキシラジカル捕捉能が増強されることが明らかとなった。さらに、これら醤油添加試料は魚臭のマスキング効果が大きく、官能検査において総合的に好まれる結果が得られた。