抄録
【目的】ユリ科野菜については、アリシンなど含硫化合物について消費者の機能性への期待が高まっている。アリシンや他のニオイ成分については、alk(en)yl-cysteine sulfoxide (I)が植物組織の破壊に伴い、酵素作用によって生成する。各種野菜のニオイや機能性を検討するには、比較的安定に存在する(I)を定量するのが簡便である。そこで、(I)を誘導体化せず簡易に分析できる手法の開発に取り組んだ。
【方法】キャピラリー電気泳動装置3D-CE(アジレント)を用いた。キャピラリー管は内径0.050mm×100cm、温度25℃とし、電気泳動液には20mM安息香酸ナトリウム、0.5mM テトラブチルトリメチルアンモニウムブロミドを水酸化ナトリウムでpH12.0に合わせたものを用いた。印加電圧は-30kV、分析時間は10分とした。野菜試料については、蒸気あるいは沸騰水等でブランチングした後、破砕抽出した。
【結果】ニラを茹でた後水抽出し分析した場合には、メチイン、アリインに相当するピークが観察されたが、生のまま破砕し抽出した場合にはこれらのピークが消失しピルビン酸のピークが観察された。本法は(I)の分析に有効であり、ニオイ成分と比べて簡便で再現性よく定量できるため、調理に伴うニオイや機能性成分変化を評価するのにも有効と考えられる。ニラをみじん切りにして20分室温放置すると、5cmに切断して放置した場合に比べて、メチイン及びアリイン含量の低下が認められた。またニラの(I)として、アリインとして記載される場合が多いが、測定結果によれば、メチインが主要成分であった。本法は,キャベツ中のメチインやニンニク中のアリイン,メチインの定量にも適用できた。