日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成18年度日本調理科学会大会
セッションID: 1D-a1
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口頭発表
蒸し煮マイワシ揮発性成分中のプロパナールの生成について
*笠原 賀代子
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抄録


【目的】蒸し煮マイワシの主要揮発性成分の一つとして同定されたプロパナールについて、その生成に及ぼす個体差および鮮度低下の影響ならびにn-3系脂肪酸の加熱揮発性成分との関連性を追求することを目的とした。
【方法】水分含量および漁獲時期の異なるマイワシから調製した蒸し煮揮発性成分のヘッドスペース・ベーパー(H.S.V.)をGC-MS分析し、プロパナールのピーク面積を比較した。また、冷蔵保存によって鮮度を低下させ、脂質酸化を進行させたマイワシについても同様にH.S.V.を調製してGC-MS分析した。一方、n-3系脂肪酸であるリノレン酸の100℃加熱時の揮発性成分をn-6系脂肪酸のリノール酸と比較してプロパナールの生成を追求すると共に、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)添加の影響を見た。
【結果】水分含量の異なるもの、即ち脂質含量の異なるものでは、プロパナールの面積は脂質含量の高いものの方が大きく、プロパナールの生成は脂質含量と関連していることが明らかとなった。また、同一水分含量で、漁獲時期の異なるものにおいてもプロパナールは大きく異なり、プロパナールの生成に脂肪酸組成も影響していることが示唆された。次に、冷蔵保存によって脂質酸化を進行させた後に加熱したものにおいてもプロパナールの増加が認められた。一方、加熱したn-3系脂肪酸からプロパナールが主要揮発性成分の一つとして同定され、これはBHTの添加によって生成が抑制されることも確認された。以上のことから、蒸し煮マイワシ揮発性成分中のプロパナールはn-3系脂肪酸の加熱酸化によって生成したものと判断された。

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